現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

『3年A組』 柊の授業はどこへ向かう?

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毎週中盤あたりで「もうそろそろ離脱しようかな…」と思わせておいてラスト1分で「来週早く!!」と手のひら返させるドラマこと『3年A組』。

このドラマを見ていると、最後の爽快感だったり衝撃度がどれほどドラマ全体の満足度に影響するかがわかる気がします。

これは海外ドラマがよく取っている有名な手法で、「クリフハンガー」という最後に気になるところだけだしておいて興味を次週に引き延ばす方法です。

『ウォーキング・デッド』が代表的で、誰かが絶体絶命になったり衝撃の事実が明らかになったりして一話が終わり、続きが気になって次の話を見ていて……と繰り返していたら気がつけばシーズン見終わっていた!みたいな現象の根本はこの方式にあったりします。

 

目を引くオープニング演出

『3年A組』の場合は終盤のクリフハンガーの仕掛け方も上手ですが、オープニングでの引きつけ方もめちゃめちゃ巧いです。

例えば今週。

武智先生の目線で家を出てから車に乗り、動画をタブレットで見て、本の発売イベントに登壇するまでがおよそ1カットで描かれていました。

これ、ミュージックビデオとかでよく見る手法ではありますが、1カットにかけられる時間がそこまでないテレビドラマだと珍しいと思います。

1カット風一人称のMVでは、乃木坂46の『ロマンスのスタート』のものが秀逸です。

 


Nogizaka46 『Romance no Start』 MV

 

また、韓国映画の「悪女」のオープニングが1人称のド派手な殺陣をCGで繋ぎまくって1カットにし、さながらFPSのゲームかのような視点を作り出しています(近年最高の一人称演出だと思うのですが、動画がない…)。

今週の『3年A組』でもそうでしたが、初めはたくさんの人やモノが映る広めのカットを撮っておいて、あとから編集でズームしたり急激にパン(カメラを動かすこと)をつけたりすることで映像的に飽きがきやすい1カットを劇的に演出していました。

このドラマは毎週1回はこういう映像的な遊びを入れているのでそこも注目して見てみると面白いですね。

 

ついに抜け出した金八構造

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これまでの『3年A組』は、

 

柊のお題が出る→関係する生徒が追い込まれて行動を起こす→永野芽郁が怒る→柊が熱く諭して生徒改心

 

という、「バイオレンス金八先生」の展開を毎週毎週繰り返していました。

さすがにこれを10週続けるには限界があるようで、先週の福原遥への説教についてはその元となった事件、柊の行動共に多少の無理がありました。

そして今週ついに武智先生と向き合うという形で「金八展開」を卒業。

教室の生徒たちも「これで終わりなんじゃね?」と言っていたくらいですから、生徒側が説教されるようなこともなくなるのでしょう。

しかし柊自身は「ここからだ」と宣言。

景山の命を奪った根本的な原因は、生徒・先生そのどちらにもなかったということなのかも。

では、ここまで続いてきた柊の「授業」はどこに向かうのでしょうか?

 

作品を象徴するマインドボイス

『3年A組』にこれまで登場してきた中でほぼ回収されていない伏線が、

・マインドボイスの登録者500万人が100円ずつ支払う

というSNSを見ている教室の外側の人たちへの要求です。

実はちらっと支払われた身代金の総額が先週映り込んでいたのですが、その時は確か500万円かそこらしか集まっていませんでした。

第一話のラストで大々的に打ち出された柊の要求にも関わらず、この点に関してはなぜかここまで全くと言っていいほど触れられていません。

そして、今週のラストで柊が「ここからだ」と言い放った時、彼は画面の向こう側にいる人たちを見つめるような姿勢をとっていました。

 

ここからはおそらく、フェイク動画が流れてそれに反応した教室の外の人たち、つまりSNSで柊の様子を観察していた人たちに「授業」が及ぶ可能性が高いと思います。

今週の終盤ではマインドボイス住民が「正義」を声高に主張する様子がかなり印象的に使われていましたしね。

景山が自殺した大元の出来事は3-Aの生徒が作り、それを武智が加速させたのかもしれませんが、実質的な行動にまで追い込んでいったのは外側の無責任な人々、つまりマインドボイスの人である。そんな風に柊は結論づけたのかもしれません。

 

というわけで、来週もまんまと見たくなってしまった『3年A組』。

今後もどんな風にして驚かせてくれるのか楽しみです!