年の瀬も迫ってきたということで、2018年をまとめるような投稿を。
今年もたくさんの映像作品を見てきましたが、このブログを始めるようになってからはより真剣に見るようになったと思います。
クールを見ている途中で仕事が忙しくなって視聴習慣が壊滅したり、そもそもつまらないと思ったら終盤であっても見なくなったりするタイプなので通しで見たドラマ自体が数少ないのですが、その中から今年特に記憶に残ったドラマをご紹介。
初回〜最終話までちゃんと見ていた時点で私の中では「オススメ度大」なので、お正月休みの期間にざっと見てしまうのもいいかもしれませんね。
というわけで、2018年ドラマ・マイベスト、早速行きましょう!
第10位 西郷どん
NHK大河ドラマ「西郷どん」。
明治維新の英雄でありながら、次第に新政府と対立していき、最後は新しい国の反逆者として西南戦争を率いて散った西郷隆盛のドラマです。
西郷を演じるのは、日本でも有数の「憑依型」とも言える徹底的な役作りをする鈴木亮平。本作でも痩せっぽちの青年西郷から晩年の精悍な西郷まで、体型がまるっきり変わってしまうほどの肉体改造をして挑みました。
日本史を代表するスターが揃い踏みしている明治維新において、龍馬の次くらいに人気のある西郷隆盛。しかし私たちが歴史を教わっていく中で、西郷は「なぜか」新政府に反旗を翻し、時代遅れの刀を最新兵器によって打ち砕かれていきます。
なぜ西郷は西南戦争を起こさなければならなかったのか?
戦争を嫌い、話し合いで物事を解決していく温厚で人情に厚い西郷が刀を握ることになった経緯を、本作はかなり深いところまで描いていました。
特に終盤にかけての展開は圧巻でした。
日本を変えようとしてこれまで動いてきた西郷が、変革を完成させるために自らが旧勢力の象徴となって死ななければならない。
武士の世の中を終わらせるつもりが、気がつけば自分が最後の武士になっていた。
このあまりにも皮肉すぎる展開と、それを悟って「死ぬために」戦場を笑顔で駆け抜けていく西郷の姿は爽やかですらありました。
そんなラストも印象的でしたが、本作において一番の見所は島津斉彬が登場していた第1クール(第1話〜第12話)。
渡辺謙演じる島津斉彬が西郷のメンター(導師)となって、彼を鍛えまくります。
正直言って、第1クールは「西郷どん」ではなく「斉彬どん」状態。
渡辺謙があまりにも渋く、カッコいいため、西郷の姿は霞みます。
さらに斉彬が亡くなって西郷が島流しに遭う第2クールに入ってからも、彼は斉彬の死から立ち直れません。
そこで二階堂ふみ演じる「愛加那」と出会うことで心に安らぎをようやく得るのですが、島流し編でも存在感で言えば二階堂ふみが圧倒。
つまり、第1クール・渡辺謙、第2クール二階堂ふみ。
この2人によって「西郷どん」が本当の主役に躍り出るまでは半年くらいかかりました。
個人的にも、満足度は第1クールが最高潮で、第2クールに入って二階堂ふみがフェードアウトしてからは少し物足りなさを感じたりしたもの。
渡辺謙が日本でまた本格的に主演してくれるドラマが見たいと強く思った作品でもありました。
第9位 ガールはフレンド
果たしてこのドラマを見た人はどれくらいいるのだろうか。
11月27日の深夜にTOKYO MXでひっそりと放送された単発30分ドラマ、「ガールはフレンド」。
元カノと今カノが1ヶ月だけ気まずい同居をする会話劇で、初めはなんだかぎくしゃくした二人の関係性が、同居を通じて打ち解けていき、最後には「彼氏」という共通項を飛び越えて女同士強い絆で結ばれるというお話です。
あらすじだけ見るとなかなか普通なのですが、会話を通して二人の仲が深まっていく様子がかなり面白い。
例えば、二人が同居している家に彼氏がやってきて、3人で「お互いのいいところを言い合うゲーム」というなかなかエキサイティングな遊びをすることに。
当然のごとく元カノの方が今カノよりも彼氏の絶妙に細かい良いところを言えたりして、それに対して今カノが張り合ったりするのですが、
「じゃあ、同居してる二人でやってみてよ」と彼氏が言うとそれはそれで照れ臭くなったり。
そんな本当になんでもないやりとりが暖かく、30分があっという間に終わってしまいました。
アニメで「日常系」と分類される、大きな出来事は起こらないけれどキャラクターたちの会話で物語が成り立っている作品があると思うのですが、それともまた少し違う。
その不思議な空気感を成り立たせている主演の二人の演技力に感服するばかりです。
「どのサイト行けば見逃し配信してるの?」と思うかもしれませんが、現状存在しないらしく、、、、
「私のハードディスク内」としか答えられないのが残念です。
第8位 中学聖日記
「野生に有村架純を放したらどうなるか」を明確に表現したドラマ。
違いますね。ですがこのドラマを見ているときに何度も思ったのが、
「有村架純が現実世界にぽっと立ってたらそうなるよ!」
でした。
劇中、有村架純演じる聖(ひじり)はとにかくモテます。
大手商社に務める営業マンから、中学校の生徒、小学校の先生まで、ありとあらゆる人に言い寄られては受け入れていく姿を見ると、「まぁ、そりゃ、そうなるよな…」としか言いようがなく。
それは演出の方も確信犯的にやっていて、画面の色味から振り返り方に到るまで、
「有村架純をどう可愛く撮影するか」
これを一つのスローガンとしてドラマが作られていた節があります。
そうでもしないと「中学生との禁断の愛」に説得力が薄れてしまうからでしょう。
また、ドラマではあまり見かけない表現もありました。
画像は劇中のものではないのですが、こういった魚眼レンズで撮影したシーンが「聖と黒岩の感情が動く前触れ」として多用されていました。
色々意味はあるのでしょうが、魚眼レンズの映像の「ゆがみ」を、二人の関係性の倫理的な「ゆがみ」と引っ掛けているのだろうと私は感じました。
中学聖日記において大きなテーマとされていたのが、「外部からの目線」。
聖と黒岩は感情としては一切ブレませんが、この外からの力によって様々な壁に直面することになります。
本作に登場してくるキャラクターは総じて性格が歪みきっている人物が多く、「そこまで恨まなくてもいいだろう」と言いたくなるくらいの仕打ちを主に聖に仕掛けます。
それによって聖は黒岩と出会った中学校を退職するばかりか、静かに働いていた都心から離れた小学校からも追い出され、最終的には日本を出てタイにまで行くことになってしまいます。
二人も一時は黒岩の父が暮らす離島にまで逃げることになるのですが、ここで初めて二人は思いを遂げることができるのです。
この、「許されない愛」を果たすために周囲の目線が存在しない島に逃げ込むというのは、様々な映画で使われている展開ですね。
スキャンダラスな恋愛ドラマとして不倫ものがもてはやされる中で、中学生との愛という一味違った題材をしっかりと描ききったのが「中学聖日記」です。後半の展開が多少重複しているとか、ラストに無理があるとか多少の難はあるかと思いますが、それを上回る熱量があったと思います。
第7位 この世界の片隅に
終戦の日に戦争ドラマをやらなくなって久しい中、アニメ映画が大ヒットした機運に乗って「この世界の片隅に」がドラマ化されました。
脚本に岡田惠和さん、演出に逃げ恥の金子Dを置き、主演に松本穂香、その夫周作役に松坂桃李。堂々たる布陣は「夜の朝ドラ」との声も上がるほどでした。
視聴率的には日曜9時枠としては振るわない部類に入ったものの、勧善懲悪のお仕事ドラマが飽和しつつあった同枠に新しい試みを仕掛けたことは今後にとって大きな財産になったのではないでしょうか。
作品自体の評価としては、アニメで描かれていなかったリンさんの部分や、岡田さんのオリジナルの箇所が中盤に挟まっていたところこそがよかったのではないかと思いました。
やはり先行した映画のインパクトや完成度がかなり高いところにある以上、そこと重なる部分が強い話はどうしても比較してしまう。
けれど、1話完結のドラマという形に落とし込むことで、映画一本では伝えきれなかったものを1話区切りで表現することができていたと思うのです。
原作ファンには不評だった「現代編」ですが、多少の消化不良感はありつつもすずさんが生きた時代があったからこそ現代に繋がっているんだというドラマならではのオリジナリティはしっかりと生み出せていたのだと思います。
下手に「今のすずさん探し」的なストーリーを挟み込むのではなく、「現代からすずさんが生きた時代の話を聞く私たち」の代弁者として現代編の榮倉奈々を使っていて、1940年代から現代に帰ってくる構造になっていました。
何よりも、連続ドラマでセットごと作り込んで戦時中を再現しようとしたこと、周作の家をほぼ完全コピーしていたことなど、細かいところまで原作と真摯に向き合っていた様子が伝わってきたことに感動しました。
第6位 大恋愛
秋クールのレビューを毎回書いていた「大恋愛」。
若年性アルツハイマーを患う恋人と、売れない小説家。二人の10年にも渡る恋と闘病の記録を明るく、可愛らしく描いたラブストーリーです。
なんといってもムロツヨシが本格的なラブストーリーに初挑戦したことがポイントですよね。
これまでコメディのイメージが強く、本人ですらそのように思っていた(らしい)ところを抜擢。まっすぐで不器用な男性を演じ、私たちを感動させてくれました。
「大恋愛」を彩るもう一つのポイントは、印象的なセリフの数々。
「快速特急、降りれんの?」
「ビカレスクでエロティックな刺激が必要なんです」
などなど、一回聞いたら耳にこびりつくワードが各話必ず一回は出てきます。
これは脚本を書いた大石静さんのこだわりらしく、普通の会話をしているだけだと心にひっかからないものをわざと異物感のある言葉を入れることで強調しているそう。
確かに、フィクションなんだし小説をモチーフにしてるドラマなんだしそういうセリフがあっても納得。
けど、「ビカレスクでエロティック」なんて言葉どこから思い浮かぶのか、、、
難病ものの宿命として最後は結構辛い展開が待っていますが、前半のムロツヨシー戸田恵梨香のラブラブ模様は見ていてこちらが笑顔になってしまうほど幸福に溢れていて必見です。
第5位 義母と娘のブルース
今年民放ドラマでは屈指の視聴率を叩き出した「ぎぼむす」。
私も偶然初回を見ていて、綾瀬はるかの演技の振り幅に度肝を抜かれました。
超エリート営業マンをベースとしながら腹踊り、運動会実行委員、パン屋とありえない数のキャラクターをこなし、しっかりと泣き所は人間味深く演じる。
彼女のような経歴を辿りながら、これほど映画、ドラマ、CMと軽やかに役柄を横断できる女優はいないのではないでしょうか。
ストーリーはというと、前半は超エリートキャリアウーマンが現代社会のおかしな"しがらみ"をぶっ壊していく部分に重きが置かれ、後半は女性にとって仕事とは?育児とは?母とは?という疑問をパン屋の再生計画の中で考えていく2部構成。
前半は綾瀬はるかの世直しと、「義母と娘」の関係性の発展を見ていくことが楽しみでしたが、後半になって娘が高校生になると恐ろしい面白さに。
一見社会的な「普通」とかけ離れているキャリアウーマンのキャラクターが最も「普通」にしばられて悩んでいるという逆転の関係を生み出す展開が見事でした。
そもそも、後半パン屋の再生という話でどうやって五回分話をもたせるのかとかなり不安に思ったものでしたが、佐藤健が本格的に話に絡んできてからは綾瀬はるかとの演技合戦も繰り広げられ、会話を見ているだけで面白い状態に。
ぎぼむす全体を貫いたキーワード「奇跡は割とよく起こる」と共に、今年を代表する暖かな家族ドラマではないでしょうか。
第4位 anone
坂元裕二が手がけた広瀬すず主演の疑似家族物語「anone」。
よくこれがドラマで放送できたな、と言いたくなるほど集中して頭を働かせながら見る必要のある作品でしたが、今年最も「ひきずった」ドラマでもあります。
広瀬すず演じる主人公ハリカと、彼女が恋をしている病床の男の子彦星くん。
彼を助ける手術をするためには大金が必要で、ひょんなことからハリカは偽札作りに巻き込まれることになる。
しかも気がついたらハリカは全く血縁関係のない3人と一つ屋根の下で暮らしていた。
血で繋がらず、何か共通の目的を持ったわけでもない。それでも繋がっている。
そんな言葉で説明できないような関係性を坂元裕二の世界は優しく包み込みます。
脚本の坂元裕二さんの中では、直近の「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」、「カルテット」、「anone」が3部作だったらしく、これを書き終えた今はドラマをしばらくお休みして映画でも書きたいなあと思っているようです。
多分、一番おすすめというか、見てない人には「見て!いいから!」と伝えたいドラマなのですが、言葉にするとなかなか陳腐になってしまいそうで書けず。
ただ、ハリカと彦星くんが初めて一つの画面の中に収まる回はドラマ史上に残る切ないシーンで、これを見るためだけでも通しで見る価値があります。
第3位 獣になれない私たち
現代社会の生きづらさを、「ガッキー」というアイコンを武器にして壊していこうとしたのが「けもなれ」でした。
実は第4位の「anone」と「けもなれ」、ディレクターが水田伸夫さんで共通しているんですよね。この1年で傑作2つを生み出した水田Dは「woman」や「ゆとりですがなにか」なんかも手がけています。
作品自体はというと、脚本の野木亜紀子さんから連想されるような「スピーディ」で「明るい」要素は薄め。
しかし野木さん作品の底を流れていた今の社会を見る目みたいなものが色濃く反映されていることから、作家性が強いドラマであると言えます。
労働問題、セクハラ、震災、引きこもりなど現代的な問題の数々を出しながら、「今私たちがこれほどまでに生きづらいのはどうしてなのか?」をナイーブになりすぎずにエンタメとして仕上げているため、作家性が強いとは言いつつもそこまで身構えずに見ることができます。
問題だらけの世の中を象徴するように登場するのが主人公の深海晶で、演じるのは「ガッキー」こと新垣結衣。
しかし今回のドラマでは、笑顔でみんなから愛される努力家の「ガッキー」像を演じることがもはやできなくなってしまった女性となっています。
「空飛ぶ広報室」、「逃げ恥」と新垣結衣を描き続けてきた野木さんだからこそ表現できる、「ガッキーとは何か?」、「彼女が体現していたものは何か?」を裏テーマに抱えた現代型のラブストーリーです。
第2位 おっさんずラブ
今年の映画が「カメラを止めるな!」なら、今年のドラマは「おっさんずラブ」。
流行語大賞にまで選ばれた、超話題作です。
誇張しすぎるくらいに誇張した恋愛表現と、やってる本人たちは超真面目のギャップがあまりにも面白く、一度見たら忘れられないドラマになっていました。
このドラマを見ていて思うのが、かつての「ロマンチック」は今の「コメディ」であるということ。
例えば、お台場での告白シーンや深夜のオフィスでのラブシーン。
これらはかつてトレンディドラマとして大真面目に人々から受け入れられていた表現です。
しかし時代のフィルターを通り抜けるうちにそれらは「お寒い」ものになってしまった。
あまりにも身の回りに出現しすぎてしまったために、ベタなものとして定着したんですね。
それを逆手にとったのが「おっさんずラブ」。
男女の恋愛においてベタを使うことはできないけれど、BLでベタな表現という組み合わせはまだ使われたことがない。
おっさん同士の恋愛×かつてのド定番トレンディドラマ的演出
この掛け合わせが男女恋愛ドラマへの強烈なカウンターとなることで人々の目にものすごいインパクトを与えたのだと思います。
来年には映画化されることが決まっている「OL」。
トレンディドラマへのカウンターをドラマ版がやったのだとしたら、映画版でとるべき道は「余命○ヶ月の恋人」映画へのカウンターしかないのだと思うのですが、、、
個人的な期待としては、部長あたりが死の病かかって、、、みたいな王道恋愛映画の展開を見てみたいです。
第1位 アンナチュラル
「日本でも海外ドラマは作れる!」
こう思わせてくれたのが「アンナチュラル」でした。
1話完結ながらも一本の背骨で見事にシーズンがつながっているストーリー、ぼーっとみていると一瞬で置いていかれる高速なプロット展開など、日本製ドラマとは到底思えない濃密な作品がこれです。
海外ドラマで言うと、「シャーロック」シリーズが最も近いでしょうか。
1話あたりの情報量が多すぎてセリフ同士がぶつかったりするのが当たり前、普通はカットして後付けする自然音(きぬ擦れとか足音とか虫の鳴き声とか)を撮影時そのまま作品に収録など、超高速の展開をさらに早めるように演出が考えぬかれていてバシッと決まる。
年を重ねるごとに美しさに深みが増していく石原さとみのほぼスッピン。
それを絶妙の関係性で支える市川実日子の演技。
どこを切り取っても面白く、それでいて「新しい日本ドラマを作ろう」という試みに溢れていました。
配信サイトのおかげで、私たちは海外の良質な作品に数多く触れられるようになりました。もちろん配信されるのは海外でも人気を博したものに限られていることから、クオリティも高いものが当然多く、さらに日本の全話分の予算を平気で1話分で使ってしまうほどのお金のかかり方。日本ドラマと海外ドラマでは差は歴然としています。
「そんな中で日本のドラマを見る理由は何か?」というと、私は日本的価値観だったり、日本の役者さんだったりすると思うんですよ。
しかしその理由も、いつかは日本人の俳優が海外に進出すればなくなってしまう。
そうなるとますます日本の民放ドラマを見られなくなってしまう。
では、どう対抗すればいいのか?
日本で海外ドラマ並みの展開をするドラマを作ればいいじゃないか
それを脚本面で実現したのが「アンナチュラル」だと思います。
そう言う意味で本作が残した影響は大きなものがありますし、今年ベストのドラマだと私が自信を持っていえる理由でもあります。
というわけで、2018年の鑑賞ドラマベスト10でした。
来年もより多くのドラマを見て、たくさんの記事を書いていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。