現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

獣になれない私たち 第八話を執拗に考察する

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あと二週で最終回ということがアナウンスされたけもなれ。

今週は恒星を悩ませ続けてきた兄弟の問題に一区切りがつく恒星回でしたね。

一区切りついたとは言うものの、妻と子供の元に帰ることができた亮太とは対照的に、福島の実家が解体されて帰る家がなくなってしまった恒星の後ろ姿は非常に切なく、彼の苦悩はさらに深まってしまったように思えます。

そして、焦らしに焦らしてついに橘カイジ登場。まさかの飯尾さん!

アンナチュラルから野木作品連投となりましたが、飯尾さんがカイジだと本気で予想した人は少なかったのではないでしょうか。

さて、そんなけもなれの第八話。考察していきます。


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あらすじ

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監視カメラ問題で会社に亀裂が走ったツクモクリエイトでは新入社員を募集していた。そこに朱里が応募してきて、晶の知り合いということで即採用される。

一方、恒星が監査に入っている会社では、不正を告発した社員大熊が恒星と接触し、調査をするよう迫る。直後、叔父から兄の亮太が見つかったとの連絡が入る。

亮太は父親から継いだ会社が倒産した後、日雇いで働き続けていた。しかしそれもできなくなると誘惑にかられてスリに走り、警察に捕まったのだという。

その夜、兄との関係について晶と話す恒星。恒星は何かと言い訳をしながら亮太を助けた顛末を話すが、助けることに理由なんていらないのではと晶は返す。

 

5tapを訪れた京谷と久しぶりに会った晶。京谷の父は亡くなり、千春も落ち込んでいる様子だという。「恒星と付き合っているのか」と聞く京谷に、「ただの飲み友達」と言う晶。二人がキスする場面を見ていた京谷はにわかに信じられない。

 恒星の事務所前で亮太を見つけた晶は、三郎のラーメン屋に彼を足止めし、恒星と引き合わせる。

亮太は妻と子供の暮らすアパートの家賃を仕送りするため、晶から金を借りる。頼まれたら断れない二人はなんとなく共鳴しあう。

その夜、5tapでついに橘カイジと出会った恒星。夢を見られなければつまらないと語るカイジを、それは成功者の戯言にすぎないと切り捨てる恒星。

不起訴になった亮太を妻の待つ埼玉へ半ば強制的に連れていく恒星。道中、二人は今までの鬱憤を晴らすかのように全力で口喧嘩をする。そうして二人は、お互いを隔てていた様々なものを壊していった。

妻と子供の元へ帰った亮太。妻は亮太を受け入れるが、その姿をみる恒星の後ろ姿は寂しい。帰りのバスの車内、震災で避難区域に指定された末に解体した実家の報告書を見る恒星は、一人噛みしめるように涙を流す。

 

その夜、晶と恒星は事務所で生き残り頭脳ゲームをする。橘カイジと出会ったことを晶に伝え、自分は呉羽のことが好きだったと今さらながら告白するのだった。

 

第八話登場クラフトビールとその元ネタ

物語が深まっていくにつれてクラフトビールから注意が逸れがちですが、今週もやっていきます。タクラマカンがビールを提供する5tapがなければ、この一連のお話はなかったわけですからね!

 

岩手ビール ゴールデンエール

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恒星の影に隠れていますが、、、 冒頭のシーンで晶が頼んだものです。

 

元ネタ:いわて蔵ビール ゴールデンエール(岩手県)

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いわて蔵から蔵が取れた名前ですね。

世嬉の一酒造 いわて蔵 ゴールデンエール 330ml 24本 1ケース瓶

 

宮崎ビール 月のダークラガー

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5tapに来た京谷が晶と恒星の関係を聞いて戸惑いまくってた時のやつ

 

元ネタ:宮崎ひでじビール 月のダークラガー(宮崎県)

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ひでじビール 月のダークラガー330ml

ラベルがめちゃめちゃかっこいい!!!!

月のダークラガーがあるならばと、太陽のラガーもあるようです。

 

EDOビール

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恒星の事務所で生き残り頭脳ゲームをしていた時に二人が飲んでいたもの

 

元ネタ:COEDOビール(埼玉県)

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COEDO(小江戸・コエド)ビール 瓶333ml 6本セット

 ラベルも瓶の形もかなり忠実に再現されています。

 

今週はこの3つ。いわて蔵のビールは「復興エール(元ネタ:福香エール)」も出てきていますから、5tapは東北推しなところもあるのかもしれませんね。

また、恒星はたびたびこの復興エールを飲んでいた理由も今週でわかりましたね。

彼の実家がある福島が東日本大震災で被災し、兄の会社も倒産。

そんな背景があったからこそ、復興エールを好んで飲んでいたのでしょう。

 

軽い小ネタ:恒星の事務所のテナント

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 これは伏線等ではなく完全に助監督さんの遊び心だと思うのですが、今回初めて恒星の事務所が入っているビルの看板が出てきました。それがこちら。

西野第5ビル

3F 有限会社 根津見興業

2F 根元税理事務所

1F 株式会社 水口企画 

松田龍平が出演している作品の中で、かなり有名な役名が隠れていますよね。

NHKの朝ドラ「あまちゃん」で松田龍平が演じたアイドルマネージャーの名前は水口です。

 

大した話ではないのですが、こういうところにまでちょっとしたクリエイティビティが隠れていると見つけて嬉しくなりますよね。

さて、本題へ。

 

ついに登場橘カイジ

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呉羽が交際0日で結婚し、上場を考えている会社の社長であり、オンラインゲーム「プテラオンライン」の作者でもあり、おでんの大根のような人でもある。

そんな風に様々な角度から語られながらも肝心の姿だけは見せなかった橘カイジですが、今週からついに登場。しかもキャストはずんの飯尾さん。

わずかながらの登場だったのですが、細かいところにキャラクターが表れていたので少し拾ってみます。

左手薬指にネイル

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まずは意味ありげに映されていた指先。

左手の薬指にだけ黒っぽいネイルが施されています。

おそらくこれは結婚指輪の代わりでしょう。

恒星が初回に「契約」と結婚を言い表したように、カイジも結婚自体をそこまで重たいものとして受け止めていないのかもしれません(そもそも交際0日婚ですし)。

わざわざ指輪を買って愛の証とするよりも、ネイルをしてオシャレに既婚を表したほうが煩わしくないし、重たくない。

ここに橘カイジというキャラクターの一面が見て取れますよね。

 

ゲームを作り始めた動機

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カイジはゲーム作りを始めたきっかけを、

「ぶっ壊れたことがあって、ゲームで現実逃避した」ことだと言っていました。

(飯尾さんが演じた役でぶっ壊れたといえば、「アンナチュラル」で中堂さんの「クソ」責めのパワハラを受けたことが記憶に新しいですね)

実はこのセリフ一つでけもなれの登場人物中の二人と同じ境遇にあったことが示されています。

まずは朱里。彼女も京谷に振られたことがきっかけでオンラインゲームの世界に逃げ込み、4年も出てくることができませんでした。

もう一人は晶。彼自身も始めは晶のような、なんでも周りの言うことを受け止めてしまって自分一人で辛くなってしまうタイプだったのかもしれません。現に晶は二度までも死のうとしていますから、ぶっ壊れる寸前だったと言えます。

 

大方の予想通り、今のベンチャー企業の社長と同じようなマインドで生きていますから、出てくる言葉も前向きで理想論が先行しがち。

でもその言葉は自分がぶっ壊れてどうにもならなくなった過程を経て獲得したものですから、晶や恒星、朱里のような八方塞がり状態を経験したその先にいる人と言うこともできますよね。

 

最終回含めてあと2回、今後の展開を予想する

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脚本の野木さんのツイッター上で、「放送はあと2回」だと言うことがわかりましたので、来週が最終回直前の回になります。

もうだいぶ要素は出揃ってきましたから、どういう展開を迎えるかを考察してみましょう。

 

恒星①:経理部長の着服問題、粉飾決算

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私が前回考察した、「恒星にとっての爆弾は兄弟問題の解決」説はなんと今週で終わりを迎えました。

その代わり、「恒星にとって帰る家はもうない」というかなり深刻な悩みに変化しました。そしてここが少しわかりづらいところではあるのですが、兄弟の問題と粉飾決算の問題は別のベクトルで動いているんですね。

亮太の会社は倒産しているのですから、次の11月に迫る粉飾は別の会社のものです。

おそらく亮太のところでやったものがバレて、脅されながら関わっているのでしょう。

 

そして前半から動いていた、恒星がヘルプで入っている会社の「経理部長着服問題」。

こちらも今週大きく進展し、経理部長が3000万ほど懐を温めていることがわかりました。

恒星は告発者である大熊をあしらっていましたが、来週あたりにこの2つの要素が絡んで、

着服を暴露するか、もみ消すか

の選択を迫られることになると思います。

暴露する=悪事に加担することを拒む=粉飾とも縁を切る

この構図が成立することで恒星の一つの問題が解決するのではないでしょうか。

恒星②:晶との恋?

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もう一つが晶との恋です。

これまで少しずつ進展しているようなしていないような雰囲気が続いてきましたが、今週のラスト、寝ている晶の様子をじっと眺める恒星の姿がありました。

その直前には、「自分は呉羽のことが好きだった」とようやく認めています。

後者は、今まで橘カイジが霧のようなぼやけた存在だったことで呉羽の結婚を実感しないで済んでいたものを、ついに認めざるを得なくなったことが関係しています。

つまり、カイジとの結婚がなければ呉羽とやり直すことができると思っていた芽がもうなくなってしまった。

だから呉羽とのことはもう踏ん切りがついたという、決別宣言のようにも聞こえます。

 

それを受けての前者、晶の様子を伺う恒星の姿がかなり長い時間映し出されていました。

恒星自身が自覚したかはさておいて、晶に何かしらの感情を持ったのではないでしょうか。

そしてそれは、恒星が実家が解体されてしまって「住む家がなくなってしまった」こととも関連しています。

速報レビューにも書きましたが、恒星が今住んでいるのは「事務所」であって、「家」ではないのです。

 

晶:引っ越し問題

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今週晶のエピソードはほとんど動いていないのでこちらは先週と変わらずです。

しかし、恒星側が動けば晶のゴールも動きます。

 

まず予想されるのは、橘カイジとの接触です。

今週はまだ恒星としか会っていませんが、5tapにカイジが来たからには晶とも遅かれ早かれ会うでしょう。

そして晶はいつでも辞表を出す準備ができていますし、後任候補にもなる朱里が来ていますから、形上はツクモクリエイトをすぐにでも辞められます。

5tapでカイジと会って、自分がぶっ壊れた頃の話と晶の気持ちが通じ合えば、彼の会社に移ることに話が進んでもおかしくありません。

 

次に、恒星との恋愛です。

こちらは晶側にはあまり気持ちはないものと考えられます。

しかし、晶は11月末までに今住んでいる部屋を出て行くか否かの結論を出さなければなりません。なので、更新しない決断をした場合、新しい家を探す必要性が出てきます。

「家を失った」恒星と、「家を変える」晶。

この二人は「新しい家」を見つけるという点で一致しています。

つまり、もし二人が恋愛関係に発展するならば、実は呉羽たちのような「交際0日婚」にえいやっと踏み込むことも可能性としてあるわけです(といいつつ旧消費税くらいの確率ですが)。

結婚までしなくても、「家」という観点から見れば、晶と恒星が付き合うことも理屈としてはあるような気がします。

 

京谷:晶との関係修復

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朱里、呉羽と、話の展開上はもうあまり絡むことがなくなった組に先週で加入したのでは、と密かに心配していた京谷ですが、まだまだしっかりついてきていました。

 

自分が晶に対してあまりにも理想像的なものを求めすぎていたことに少しずつ気付き始めている様子で、わざわざ晶のいるツクモクリエイトに足を運んだり、5tapに来たりとまだ関係修復を諦めていない様子です。

これまで二人の馴れ初めとかを見てきているだけに、あと少しだけ何かが変われば結婚まで行っていたように思えますし、京谷も簡単には離れたくないのでしょう。

実は京谷も、「家を探している」組の人間です。

もともと住んでいたマンションは朱里にあげてしまいましたし(そもそも今どこに住んでいるのだろう??)、晶とやり直せるのならば次こそは二人で暮らしたいと考えているはずです。

 

つまり、晶を巡っての京谷、恒星の三角関係が成立することになります。

「家」を共通点にする3人の行く末はどうなるのか。

ここに橘カイジだったり、恒星の粉飾問題、朱里の仕事問題などが複雑に絡んできてあと2回のうちになんらかのゴールを迎えるはずです。

私の予想はこんな感じですが、今まで散々予想を大きく上回る展開を見せてきた野木脚本ですから、また大外れすること請け合いですしそれが楽しみでしょうがないです。

日テレドラマ

というわけで、今週はこんな感じです!