現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「大恋愛」 第八話 感想・レビュー

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なんともいいがたいやるせなさを残して最終章へ突入、、、

小池徹平演じるMCI患者、松尾は今回で出番が終了なのでしょう。

尚と同じ病気を背負うものとして、また尚のダークサイド的な面を担った松尾でしたが、今週で完全にその役目が終わってしまった感があります。

来週から子供が生まれて最終章、ということは尚の病気も進行していくのでしょう。

幸せな二人の生活はどんな方向へ向かっていくのでしょうか。

 

        ↓第七話のレビューはこちら↓

www.ik-earlymorning.com

 

 

本当にこれで終わり?松尾問題

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先々週から登場しては尚と真司の仲を引っ掻き回し、先週のレビューでは「神経にくる嫌悪感」とまで表現した松尾ですが、今週はさらに尚の生活レベルにまで侵入してきました。

主治医である侑市から転院勧告を受けてまでも尚にこだわった理由は、以前から考えているように、自分が尚とはまったく正反対の道を病気によって歩むことになったからでしょう。

そしてその最終目的は、尚と一緒に自殺を図ること。尚を睡眠薬で眠らせようとしてなかなか強引かつ大雑把な手法を使っていましたが、もうそれくらいしか自分の未来に希望を見いだすことができなくなってしまったのかもしれません。

「自分はこれから忘れていく一方で、未来を考えることなんてできない」。これが松尾の考えでした。

それに対して尚は、「忘れていくことが私たちに与えられた特権」と表現し、病気をある程度肯定的に捉えています。

これを言った後の尚の辛そうな顔が印象的だったのですが、尚自身も完全にそうやって開き直れているわけではなく、言い聞かせるような気持ちだったのでしょうね。

 

どうやっても尚と真司の仲を裂くことはできないと悟った松尾は、夜の闇に消えて行きました。

そして二人は幸せな時間を過ごして、来週の出産のエピソードにいくのでしょう。

 

でも、果たしてこれでよかったのでしょうか。

 

物語としてはこれ以上松尾の嫌がらせを描き続けても話は広がらず、むしろ個人的怨恨へと狭まっていってしまうためここで彼に退場していただくのは必要な展開だったのだと思います。

ただ、松尾自身は何一つ救いを経ていませんし、それは尚も同じでしょう。

つまり、この松尾の一連のエピソードを通じて得られたのが、尚と真司の愛が深まったことくらいしかないのです。

言ってみれば尚の未来形として登場した松尾は、これから二人を待ち受ける困難の象徴でもあったはずです。

もっとも彼自身は病状にすこぶる後ろ向きで、尚とは大きく異なっていますが。

しかし、松尾は本来は同じ苦労と共にする仲間だったはずの尚とのやりとりを通して、絶望がさらに深まったにすぎません(自業自得という話はひとまず置いておきます)。

 

何がいいたいかというと、アルツハイマーという病気に直面した一人の男のある種の最期に対して何も解決策を見いだせていないのです。

「この病気に待っているものは絶望しかない」。松尾は登場から退場までこの考えを抱いたまま生きていました。

もちろんそれがアルツハイマーという病気の残酷な一面なのでしょうが、それを見た尚と真司は特に何かを思うわけでもなくスルーして子作りに向かったように見えたのです。

二人が最後に出す答えがどんなものになるにしても、この松尾が出てきたことに何か意味が見いだせるような展開があったらいいなぁと思います。

 

松尾、嫌な奴だったけどあんまりにも救いがなさすぎたじゃないか、、、、