現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「大恋愛」第七話 感想・レビュー

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救いはないのか、、、!

 

先週は幸せなところから暗雲を漂わせて話を終わらせる、フリーフォールに乗っているような回でしたが、今週は落ちた先からさらに落とすという。

ただでさえ尚の病気が進行していくのに、失うものがないというある意味最強の武器を備えた小池徹平がひたすら追い詰めていくのは見ていてかなりキツイものがありましたね。

そんな風に地を這うような展開の中で唯一出てきた明るい話題が、「侑市さんと尚ママの淡い恋の予感」っておい!!清涼剤としての鮮度が違いすぎるよ!!と言いたくなるようなものしかなく(侑市さんには幸せになってほしいのでいいのですが)、、、

来週からクライマックスに向かうにつれてもっと悲しいものを見るのかと思うと不安でたまらなくなりますね。

 

さすがに許しがたい小池徹平の行い

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先週の時点では、尚と同じMCIを患う患者として出てきた小池徹平について、

もしかしたら尚もなっていたかもしれないMCI患者

と表現しました。

尚が病気になった時、真司がそばにいてくれるようになった。

けれど小池徹平は妻に逃げられて一人になった。

病気を経てたどり着いた状況があまりにも正反対すぎるために、どうしても彼を100%責めるわけにはいかないと。

 

けれどなかなかこれは、、、、、

言動が純粋なる悪を求める「バットマン」のジョーカーみたいになってましたね。

例えばこれがジョーカーみたいにヒーロー映画の悪役だったらわかります。

彼自身の苦悩をしっかりと表現した上で、それでも倒さなければならないという構図がアクション映画のお約束として見えていますから。

しかし「大恋愛」は誰も空を飛んだりしないリアルなラブストーリーです。

それだけに、小池徹平のやっていることは絶対に許せないんですが、だけど彼のことを考えるとどうしても「このクズが!!」とは言えない。

なんていうんですか、この神経にくるタイプの嫌悪感。

彼がものすごい正義の鉄槌みたいなものを受ける姿は勧善懲悪すぎて見たくありませんし、だからと言って物語を通して改心して「本当は寂しかったんだ」的な自己開陳をするような興ざめな展開を期待しているわけでもなく。

頼むからこれ以上嫌いにさせないでくれとしか言いようがないですよね。

 

消えていく思い出とどう向き合うか

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 第二話のレビューで「二人の共通した思い出が後半に入っていくにつれて鍵になっていく」書いていたんですが、今週の終盤がまさにそういう展開になっていました。

www.ik-earlymorning.com

 

黒酢はちみつジュースに始まり、観覧車が見える橋での出来事、居酒屋でのアフレコなどなど。二人を結びつけてくれた思い出の中で「これは覚えている。これは覚えていない」がもうすでに分かれていましたね。

結構ショッキングだったのは、真司と尚が昔暮らしていたぼろアパートを忘れてしまっていたこと。尚にとっては「あの場所で」ではなく、「真司と」という部分に記憶の重点が置かれていたからなのでしょうか。

 

侑市さんのセリフの中で、「出来事をエピソードとして記憶することができなくなってくると、思い出が作れなくなってしまう」と興味深い知識を教えてくれていました。

出来事それ自体はただの事実に過ぎませんが、そこに感情とか文脈が乗っかってくると思い出になるということでしょう。そうなると記憶しておくべきことは一段と増えてきますから、なかなか難しくなると、、、

私たちは何も意識することなく思い出をたくさん作っていますが、それって脳がかなり高度な働きをしていてくれたからなのですね。

 

二人の共通の思い出としてかなり重要なファクターを占めているのが、「真司は小説家であり、彼の処女作を尚が強烈に覚えていたからこそ今の二人がある」ということ。

これが真司についての尚の一番の記憶であり、最後の砦となるでしょう。

その象徴となるのは、「砂にまみれたアンジェリカ」ではないでしょうか。

だからこそオープニングの映像では海辺で砂を使った二人のやりとりが描かれているのでしょうし、その時の尚の「全て終わってしまった後のような」表情を見ると、そこを想像するのも結構キツイですが、、

 

というわけで、今週は歯を食いしばって見ることになりましたが、来週は少しでもいいから二人が前を向けるものを見つけて欲しいなと願います。