現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「獣になれない私たち」 第五話 感想・レビュー

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堂々巡りが断ち切られた!!!

 

連続して神回でしたね。

野木さん伝家の宝刀過去回想、黒木華のとてつもない名演技、そしてガッキーを追い詰めて追い詰めて最後に後ろからとんっと背中を小突いて一歩踏み出させる絶妙なバランス!

正直前半30分は第一話とほぼ同じ構造で、「大丈夫かこれ」と思ってしまったくらいなんですが、それすらも伏線として使うしたたかさ!

むしろ私たちが晶の苦悩を四週分見続けてきたからこそ、また同じ"堂々巡り"にはまり込んでしまった彼女のキスに歓喜するのですよね。

そして最後の「Welcome to the new world  Produced by Kaiji Tachibana」!今まで散々情報を小出しにしてきた呉羽の旦那がこんなとんでもないところから飛び込んでくるとは!

おそらくこれで「晶の堂々巡り編」とも言える1〜5話が終わり、これから新たな章の幕開けですよという合図も含まれているのでしょう!ただ、これがどんな「new world」なのかは、おそらくこの演出の元となっている映画と同じく、地獄になるのでしょう(そこはまた考察編で詳しく解説します)。

 

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携帯をスワイプする晶は何を意味するのか?

「幸せなら手を叩こう」の鼻歌に乗せて冷たい鉄の階段を登っていく晶。第一話で電車に飛び込もうとする彼女を見ているだけに私たちには最悪の予感がよぎります。

しかし、下を見つめるだけで終わり、おもむろに携帯の連絡先をスワイプし始めるのです。なんども、なんども。

これ、自分がどうしようもなく追い詰められた時に連絡できる相手が今まで京谷しかいなかったことに晶が気づいてしまったんだと思います。

スワイプした時に表示される名前は、四文字の「苗字+名前」の人ばかり。

仲の良い女友達の一人でもいれば、下の名前だけで登録しているようなものなのに。

この時晶は、今まで自分が築いてきた人間関係は仕事周りだけだとわかったのでしょう。京谷以外に拠り所としてあるのは「5tap」。京谷、5tap、そのどちらも今は関わりたくない。もう頼れるところがない。

 

晶が千春に電話をしたのは、最後の手段だったのかもしれません。

これもまた予想外の所に救いを求めましたよね。でもよく考えてみれば、一人で文句も言わず夫の介護をし続ける千春の境遇は、晶にあまりにも似ています。

なぜ、辛くないのかと聞く晶に千春は、「愛しているからだ」と答えます。それも、今はもう会話もできない夫との馴れ初め話まで引き合いにだして。

 

獣になるための唯一の条件

福井県に住んでいた千春は、地元の店を手伝いながら、若狭湾に閉じ込められて暮らす日々。自分の人生はこのまま終わっていくのだろうか、そんなことを思っているときに、後に結婚する花井が思いを伝えてくれた。

女性の社会進出なんてはなから想定されていない、けれどここにいるしかない。そんな若狭湾の小さな町。そのちょうど反対側にある相模湾に住むという決断を千春はした。

それは彼女にとっては一歩踏み出す、「獣になる」瞬間だったのでしょう。

 

では、あの時獣になった千春はどうなったか?寝たきりの夫を抱え、子供達から見捨てられている。幸せとは到底言えない状態です。それでも千春は夫を選択した過去を悔やんだりしていないし、夫の病気それ自体を受け入れているように見えます。

 

けもなれの登場人物において、「獣」側の人は過去を肯定していますが、晶や恒星、京谷など「獣になれない」側の人々はいつまでも過去にこだわり、縛られています。

 

それが堂々巡りを招いてきたわけですが、今週晶は京谷を拒むことで、恒星は呉羽の旦那を知ることで、京谷は朱里を見放すことで、自分を捕まえていた過去から脱却しました。

 

私たちは最初の5週をかけて、現在を肯定するための第一歩である「過去の清算」を見てきたのだと思います。

 

あまりにもひねくれすぎた朱里の思い

そして最後に今回の裏主人公とも言える朱里。

京谷からついに見放されてしまい、今週の大きなテーマだった「堂々巡り」の原因となっている彼女もまた変わらざるを得なくなりました。

本当に一瞬のカットでさりげない演出だったのですが、京谷と別れる時、朱里の足元が映るんですよね。

彼女は、赤いペディキュアをしていたのです。

私はこれを見て泣きそうになりました。

彼女もいろんなことをして京谷との別れを受け入れないようにしていたことがこの一瞬で伝わったからです。

朱里はまだ、京谷に女として見てもらえるささやかな希望をもっていたんですよね。

 

確かに晶とのシーンでは、生活のため京谷を利用してるとか、もう気持ちなんてないって言っていましたが、全部本心を隠した言動でした。

今週の、というか全編を通して黒木華さんの演技があまりにも素晴らしすぎます。

普通に演じたらあんなヒモの女性、共感してもらえるように演じられません。

それを本当にギリギリの節度を保って演じることで、今週こんなにも感動的な朱里の気持ちを見せてくれた黒木さん。すごいです。

 

ずるい次回予告

そして衝撃の次回予告。先週は泣いている晶の背景で京谷の「愛せなくてごめん」のセリフがあり、二人の別れを予感させていました。しかし京谷の言葉は朱里に対してのもので、なんという騙しっぷり!!!

なので全部が全部本当とは思わず次回予告を見なければならないのですが、とりあえず呉羽の結婚が偽装結婚だということがわかりましたね。

このブログでこれまで散々「呉羽の旦那はブランドのパトロンだ」と考察してきましたが、その説も濃厚になってきたのではないでしょうか。

 

↓執拗な呉羽の旦那考察の過程↓ 

www.ik-earlymorning.com

 

日テレドラマ

そしてまだまだ続きそうな晶の苦悩。元はと言えば呉羽が京谷にちょっかいを出したのが原因ですから、まだ何も解決していないんですよね。

とてつもない傑作の予感がしてきたけもなれ、とりあえず速報レビューでした。

 

来週、早く!!!