現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「ヴェノム」永遠に続編が作れそうな可愛いダークヒーロー!

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最悪――――

 

悪に対抗できるのは、最悪だけだーーーー

 

マーベルコミックスの中でも人気の高い悪役、スパイダーマンの宿敵ヴェノム。そのオリジンストーリーを、「ゾンビランド」のルーベン・フライシャー監督と「マッド・マックス」のトム・ハーディがタッグを組んで、満を持して映画化。

 

おお、いい。カッコいい。カッコいいぞ!!悪役大集合大失敗映画「スーサイド・スクワッド」を生み出したDCコミックに変わり、ついにマーベルが本腰を入れて悪役映画を作ってくれる!

事前のキャッチコピーやダークな予告編に魅了された私は、サム・ライミ版「スパイダーマン3」から待つこと11年。ついに復活したダークヒーロー、ヴェノムを拝みに行きました。

 

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あれれー?おかしいよー?

 

私が思ってたヴェノムは、こんな感じじゃなかった!

でも、なんか面白い!何この感覚!?

 

今回は多くの人を現在進行形で巻き込んでいる”ヴェノム旋風”の根源をご紹介!

 

 

 

あらすじ


VENOM Official Trailer #2 - Tom Hardy

「誰もが望む、歴史的偉業」を発見したというライフ財団が、ひそかに人体実験を行い、死者を出しているという噂をかぎつけたジャーナリストのエディ・ブロック。正義感に突き動かされ取材を進めるエディだったが、その過程で人体実験の被験者と接触し、そこで意思をもった地球外生命体「シンビオート」に寄生されてしまう。エディはシンビオートが語りかける声が聞こえるようになり、次第に体にも恐るべき変化が現れはじめる。(映画.comより)

 

作品情報

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タイトル:ヴェノム(原題:Venom)

 

上映時間:112分(内エンドロールが16分!)

 

監督:ルーベン・フライシャー(『ゾンビランド』)

 

キャスト:トム・ハーディ

     ミシェル・ウィリアムズ

 

製作国:アメリカ(2018年)

 

圧倒的な肩透かし

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 映画開始早々、宇宙から謎の生命体である「シンビオート」が飛来。マレーシアの研究隊が襲われます。

パニック映画やモンスター映画のお約束的なオープニングシーンに興奮させられたと思いきや、そこからヴェノムの大暴れまでは60分くらいおあずけを食らいます。

 

その後何が起こるかというと、ひたすら主人公エディのうだつの上がらない日々を追い続けるのみ。ちょいちょいヴェノムのお仲間の一人であるシンビオートが暴れたりするアクションパートはあるのですが、なんだか盛り上がりにかける展開。

それはヴェノムがエディに寄生してからも変わらず、何かエディがいらついたら力が一瞬使われるくらいで、例えるならば、「ハルクが緑色になりかけてはすぐ戻る」のが続く感じ。

 

予告編を見て、悪の力を手に入れたエディの大暴走を楽しみに来た私は中盤辺りで「宣伝詐欺」に遭ったことを確信します。

 

しかし

普通だったらここで集中力を失うところが、肩透かしを食らって肩の力が抜けたあたりから映画が面白くなってきます。

 

そもそもこの映画は「マーベル映画」ではなくて、「マーベル監修映画」であり、ヒーロー映画のスペクタクルを求めて見ること自体が間違っていたのです。

 

では、この映画は何か?例えるならば、

 

ほのぼのギャグ漫画が巻頭カラーをもらって張り切った結果のバトル回

 

がこれに当たります。

 

ヴェノムは悪ではない、可愛いという概念だ

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最初はエディの中に巣くう純粋なる悪、みたいな扱われ方をするヴェノムですが、だんだん

 

あれ?なんかそんな大したやつじゃねえなこれ!

 

ってことがわかってきます。彼が街を歩くエディに脳内から語り掛ける言葉と言えば、

 

「あいつうまそうだな、食っていいか」

という人肉食レポ依頼から、

「ほんとはこの女が気に入ってるんだから告っちゃえよ」

という男子的後押しくらいなもので、

サム・ライミ版のスパイダーマンで見られたような根源的な悪への恐れはほとんど感じられず、ましてやジョーカーみたいな純然たる悪魔とはかけ離れています。

 

どちらかというと、人間のしがらみとか将来への不安とかを取っ払ったものとして宿主にライフハックを教える存在になっています。

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ヴェノムの仲間たち


くまのプーさんと一緒ですし、オラフとかとも同種類です。ただ宇宙から来てるだけです。

 

ただ火を噴いたら強いんです。私は途中からデスノートのリュークとか、家庭教師ヒットマンリボーンのリボーンを思い出しました。

 

ヴェノムはエディを支配する存在ではなく、そっと傍にいて横から茶々を入れているようにしながら実は主人公を支えているマスコットキャラクターなのです。

 

こうなってくると、もはやヴェノムが可愛く思えてきます。エディがもう少しへなちょこ野郎だったら、まんまドラえもんと同じになったかもしれません。

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エディ「ヴェノム、またジャイアンにいじめられた」

ヴェノム「誰だそいつは、うまいのか、食ってやろう」

ドカン公園に広がる地獄絵図。

 

みたいな展開もあり得ます。こんな風に、日本の漫画・アニメに脈々と受け継がれてきた「万能バディもの」の要素をモロに引き継いでいるのです。

 

永遠に作れそうな続編

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アメリカでは公開直後から大ヒットを飛ばし、続編にGOが出てもおかしくない状況です。そもそもスパイダーマンの人気キャラクターでもありますから、将来的にスパイディーと共演することも視野に入れての映画化なのでしょう。

また、映画の内容からしても、宇宙から飛来したシンビオートの数は4つ。ヴェノムと、今回倒した敵を除いても後2体残っていますから、都合「ヴェノム3」までは作れるわけです。

しかし、この「ヴェノム」においては、敵キャラすら必要ないと思えます。

エディと天の声ヴェノムのおとぼけコンビによるコメディドラマを主軸に、たまにシリアス回があったり、残りのシンビオートを交えてのバトル回があったりと、連載漫画のような展開ができると思うのです。

 

いつもの「マーベルらしい」アクション映画を期待していくと結構がっかりするかもしれませんが、なぜかヴェノムにハマってこれからも続編を楽しみにしてしまう、そんな謎の愛情が芽生える映画でした。