現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「獣になれない私たち」 第二話 感想・レビュー カネの音・・?

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 「見ているのがツライ」といううめき声がツイッター上に流れた第一話とは雰囲気が代わり、とても軽やかな第二話でしたね。

 第二話の冒頭の冒頭は、アヴァンという前話の直前までの振り返りから始まったのですが、晶のサングラス姿を再び見られたのが嬉しかったです。

 サングラスをかけて颯爽とデスクに座るも、

 

ん?んん?見づれえなこれ!!

 

 っていう風にむず痒い表情をする様がたまらなくおかしいんですよね。

 反抗し始めたはいいものの、第一歩目のおもわぬところから足をすくわれているような。どんなに変化を求めても晶は晶で急激に変わるわけではないんだよ、ということをなんとなく読み取れる感じがして、好きなシーンのひとつです。

 

 そして第二話はまさしく、この「なんとかしたいんだけどどうしようもできないもどかしさ」にどう対処するか、ということが焦点に当たっていたように思います。 

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新人上野の苦悩

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 PC画面に猛烈な自己主張を埋め込んでいることで一度見たらもう忘れられない強烈ダメ新人、上野発。彼は第一話で逃亡してから会社に来ていない、というところから第二話が始まります。

 会社に来るように説得に向かった晶へ上野が語ったのは、「仕事向いてない」などの基本的なネガティブ発言でした。それに対して晶は「まだ半年も働いてないんだから」と返します。それに対してもぐちぐち言う上野に業を煮やし、「じゃあやめたらいいんじゃないの」というと、それも嫌だと。その状態を上野はこう表現します。

 

「続けたらいいのか、諦めたらいいのか、どっちに行ったらいいのかわからない」

 

 あぁ、すごくよくわかるな、と素直にそう思いました。私の人生は8割くらいこれに関する悩みで構成されているように思えます。

 

 今やっていることに対して不満はある。そのために何か現状打開を図りたい。けれど一発逆転の手なんてどこにもないし、じゃあこのまま現状維持をしてチャンスをうかがう?それは手間がかかるし嫌だなあ。それとも、元から打開なんて夢みるのやめて気楽に生きてみる?そんなことはもっと嫌だ。

 

 なんというか、こんな風に右にも左にも動けないし、だけど今いるポジションに満足しているわけでは絶対的にない。そんなもやもやが常に渦巻いているんですよね。

 

 上記は私の話ですが、第二話で晶もこの「続けたらいいのか諦めたらいいのかわからない」状態に陥ります。

 ファッションを大きく変えて自分も変えようと思ってやってみたはいいものの、性根に染み付いた人の良さはどうしても引っ込まず、当然周りからも「グレた」とか軽く見られる始末。だけどそれじゃ散々悩んだ意味がないからブーツを履き続ける程度の抵抗は継続してみる(それもまた焼肉のタレごときに邪魔されるわけですが)。

 同じく恒星も、八嶋智人演じる社長に粉飾決算に荷担するよう迫られ、邪険に扱うもののなんだか放っておけない。それは呉羽が発した「恋に落ちると鐘の音が聞こえる」の言葉によるものでした。恒星のいつまでも呉羽との過去の関係を思い返しては嫌な気分になってしまう性格もなかなかツライものがありますね。

 そんな風に、「どっちに動いたらいいんや」ペアが向かったのは、現実の鐘の音を聴ける教会でした。

 結局鐘はやっておらず、聞けたのは下校のチャイムくらいでなんとも言えないものでしたが、足掻いた結果、なんだかわかんないけどくすっと笑ってしまう体験ができたのだからこれでいいんじゃないかな、って思ったりもする、ちょっとミニシアター映画みたいな第二回でしたね。

 

晶と京谷、晶と恒星 二人の時間感覚

 今回おそろしくよかったのは晶と京谷二人が交際することになるまでの回想シーンでした。派遣と正社員という関係性での出会いから、次第に仲が深まっていき、晶が退職するタイミングで結ばれる。

 この回想シーンに入った瞬間から、二人の動きが少しもさっとして映画のような見た目に変わります。フレームレートという、1秒あたりに何コマ動画を表示するかという値を変えるとこういった効果が得られるんですね。

 「あぁ、なんだか居心地がいい関係だなあ」なんて見ていると、最後の二人だけのカフェのシーンでは、動画は速度制限かかったyoutubeのようにカクカクに。

 関係性を描くシーンでこうやってフレームレートをいじって演出する方法なんてそうそうお目にかかったことがないので、新鮮で考察しがいがありますよね。

 これですぐに思い浮かぶのは、「二人でいる時に時間の流れがどういう風に感じられるか」の表現ですよね。

 

 ちなみに、晶と恒星が鐘の音を聞きにいくシーンでは、逆にフレームレートを落としてスローモーションのような効果を得た上で、音声を動画よりも遅く流す手法を取っています。

 こうなってくると、晶が京谷と恒星、二人と過ごしている時間の流れがまったく異なることがわかりますよね。

 

鐘の音ってなんだったの?

※ここからは完全に私個人の妄想です。

 こうして第二話全体を包み込んだ呉羽の「鐘の音」発言ですが、これは一体なんだったのでしょう?

 私はこの発音を聞いた時、「カネの音」と聞こえました。つまり、一直線に「鐘」と変換されなかったのです。

 その理由としては、第一話の考察記事に書いた「呉羽、パトロンと0日結婚した説」があります。(詳細は下記をご一読ください)

www.ik-earlymorning.com

 

 では、私はどう変換したのか、もうお分かりですよね。

 「カネの音」→「金の音」

 つまり、呉羽が言ったのは恋に落ちるどうこうの話ではなく、金になりそうなお話だった、という意味なのです。呉羽的にはそんな重大な意味を持って言った言葉じゃなかったけれども、恒星が拗らせた結果ここまで話が広がってしまったのではないでしょうか。

日テレドラマ

 というわけで、恋愛ドラマとしても豊かなバリエーションを見せた「けもなれ」、土日になったら執拗に考察シリーズもあげますね!