現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「大恋愛 第一話」真面目なムロツヨシの演技に痺れる

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 福田組のひょうきんな役の印象が強いムロツヨシですが、スレた大人を演じてもピカイチだということが、TBS金曜10時枠の「大恋愛」でわかりましたね。

 

 ものごとを合理的に進めて、無駄のない生き方をしてきた北沢尚(戸田恵梨香)が出会ったのは売れない小説家、間宮真司(ムロツヨシ)。尚の婚約者である医者の伊原(松岡昌宏)とは正反対の、隙だらけで、時折冷たいような印象すら与える間宮に急速に惹かれ、半ば尚が押し切るような形で間宮と一線を超える。しかし尚の身には、思いも寄らない病が忍び寄っていて、、、というのが、初回のあらすじでしょうか。

 

親しみ度500%の二人の演技

 

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ムロさんのギャグキャラが炸裂したアフレコシーン

 私はリアルタイムでドラマを見れず、唯一リアタイできたのはこのシーンのみ。ムロさんの軽妙なしゃべり口と、やりとりのおかしさについ夢中になって見てしまい、録画で頭から見直すつもりだったのにそのまま完走してしまいそうになりました。

 引越し業者としての間宮はそこまでいきいきと働いているとは言えず(人の家で勝手に飲み食いしてましたからね)、水道管を直すシーンでも半ば脅しのような口調で修理を迫ったりと、ただのお人好しではない様子を見せていた間宮が、初めてその魅力を見せてくれるのが、この居酒屋のシーン。アフレコということで、多分台本はあるのだろうけど、「あれ、これアドリブ入ってる?」と思わせてくれるような喋り方で、劇中の尚が惹かれたように、ここで間宮をみんなが好きになりましたよね。

 ムロツヨシだけでなく、その相手役としてぐいぐい間宮を引っ張っていく役どころを演じた戸田恵梨香の演技も自然に溶け込んでいて、第一話の時点で二人の距離が縮まっていく様を見ていくのが非常に面白かったです。

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タイプなの?と誘ってみたりする尚

素敵なセリフに満ちた居酒屋第二ラウンド

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アフレコ、というテイで自分の気持ちを表現する尚

 かと思えば、尚が一歩踏み出す気持ちを間宮に伝えた二回目の居酒屋シーンは、震えるくらい素晴らしかったですよね。

 

 「私、快速電車に乗ってしまってる。けど、今すぐ快速電車を降りたい」

 「私が行きたかったのは居酒屋じゃなくて、あなたの家」

 

 一回目はコメディの要素として演じられたアフレコ芝居が、二回目は本心の吐露としてリフレインされる構成のウマさ。

 そしてそれを受けて、尚の気持ちを簡単には受け入れようとしない間宮が一度逃げる。けれど、「家に行きたい」と、直球の気持ちを伝えることで勝負にでる尚。

 自分の現状に対するコンプレックスや、尚の事情(婚約している)などを考えて積極的な態度に出ていなかった間宮と、婚約者と間宮のどちらが本当にいいのかを決断するために一歩踏み出した尚の対比。二人のやりとりが、重たくないのに真剣に見られるように演出されていました。

逃げ恥を思い出す二人の関係性

 演出を担当しているのが「逃げ恥」の金子Dなこともありますが、どこか恋愛に積極的には行かず、自分の殻にこもっている男性と、自分を強く持っていて、逃げる男性を少しずつ崩していく女性、の関係性は、さながらみくりと平匡さんのようですよね。

 世間的にも男性が弱いと言われがちな昨今において、女性が男性が勝手に築いた牙城を打ち壊していくストーリーはやはり共感を得やすいものがあります。

 逃げ恥では全11回をかけてみくりが平匡を攻略する構造になっていましたが、大恋愛においてはどんな展開を見せるのでしょうね。

 

黒酢はちみつドリンクの重要性

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劇中何度も使われるドリンク

 あと気になる点としては、二人の出会いの場面、尚の物忘れの始まりを象徴する場面、二人が初めてお互いの壁を打ち破る場面、こういった物語が大きく動く場面に必ず登場した「黒酢はちみつドリンク」です。

 尚が若年性アルツハイマーになっていく今後の展開を考えると、「記憶」に関わる部分として二人の思い出の品は、

 

・黒酢はちみつドリンク

・砂浜のアンジェリカ

 

の二点です。どちらもかなり長い時間をかけて掘り下げられたアイテムでもあります。

二人の関係性を尚が思い出していくキーアイテムとして、今後も登場する可能性がありますよね。

 

 

 という感じで、初回を簡単に振り返ってみましたが、ムロツヨシの軽くて、けれどかっこいいお芝居、二人の生き生きとしたやりとり、比喩に満ちたセリフ回しなど、かなり見所の多い初回だったと思います。

 回が進むにつれて悲しい展開になっていくのは多少仕方がないのかもしれませんが、今回のようなユーモアも交えてどう描いていくのか、今期注目ドラマの一つだと思います。