現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「シグナル 第四話」感想・レビュー

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 タイムスリップものとして新境地を切り開いている関テレドラマ「シグナル」。視聴率の方も好調で、初回から落とさずにずっと10%行かないくらいのところをうろちょろしています。今日確認して笑ったのは、「おっさんずラブ」の初回視聴率が2.9%。こないだの第二話が4.3%と、連ドラでは異例の視聴率アップをしているんですよね。かくいう私も一話をリアルタイムで見ずに二話から入ったので、ネットのざわつきがかなり影響したと思われます。

 

感想:大山の走り方だせえな!!!!

 

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キャプチャに悪意はありません

 90年代をフィールドにして、恋に仕事に大奮闘する大山刑事ですが、初回からトムクルーズだの走り方がダサいなど好き勝手言ってきましたが、やっぱり気になってしまいます。アクションはキレッキレなのに走り方が完全に「運動神経悪い芸人」の域に到達してるんですよね。なのに毎週毎週大山が猛ダッシュするシーンがぶち込まれているので演出側も狙ってやっているんだろうなとは思いますが。では、あらすじを。

 

あらすじ

 97年に発生した連続女性殺人事件の犯人を追っている2018年の三枝警部補(坂口健太郎)ら未解決事件捜査班。三枝は97年を生きる大山(北村一輝)と無線機を使って交信し、第五の被害者であるみどりを助けようとする。時を同じくして、2018年にかつての連続殺人を思わせる手口の殺人事件が発生。捜査線上には、97年に事件の舞台となったバスを運転していた運転手と、その息子が浮上するのだった。

 

毎回更新される、「タイムスリップあるある」の打破

 初回では「過去が変われば未来も変わる」という、現在と繋がって過去を変えるタイムスリップものの常套手段をリアリティを持たせて演出するという、なかなかの大技をやってのけた「シグナル」。第二話では、「過去が変われば未来も変わるし、その途中も全部変わる」ことで、事件発生時間の差異から三枝が手がかりをつかもうとしていましたし、先週では「過去が変われば未来が制御不能に変わる」、つまり新たな殺人事件を発生させることで過去を変えるどころか現実すらも流動的になる新しさを生み出していました。その意味で言うならば、今回は「過去を未来視点で変えることで過去に過度な苦しみを与えてしまう」という新概念が生まれましたね。犯人の情報を持っている三枝の知見は、犯人がわからないまま追いかけ続ける97年の大山にとっては是が非でも欲しいものですし、そればかりか自分が好きだった女性を殺した憎むべき相手を逮捕できるかもしれないとなれば、未来と交信できるアドバンテージがなぜかもどかしさに変わってしまっていましたね。

 タイムスリップものの話を考える時って、リアルを突き詰めると絶対整合性取れないと思います。脚本初心者がよく考える話として、「タイムスリップして過去を変える話」、「いじめ被害者が復讐する話」、「なんかよくわかんない難病で恋人が死ぬ話」の三つが挙げられるんですが、そのうちの一つであるタイムスリップもの、学生時代に私も一回考えた事があります。ですがどこまでリアリティの線を引くかによって許容できる過去の変更部分と現在への影響が変わってきて、どこかで妥協せざるを得なくなるんですよね。しかもそれはリアリティに寄せれば寄せるほど難しくなる。ファンタジーにくるめばある程度の不都合も省略できる(君の名は。とかそうですよね)けれど、この「シグナル」のような場合リアリティに寄りまくってるのでそうもいかない。

 それを逆に話のギミックとして利用してるのが今作ですよね。未来と過去、改変された過去とその未来、という突き詰めて考えれば色んなものが信じられない範囲で変わる現象を全て話に含めてしまおう、そんな試みがあるように思えます。だからこそ、毎回毎回新しい設定(ルールとでもいうのでしょうか)が加わっても、「あぁ、よく考えればそうだよな」と納得できるかつ、「あぁ!そういう風に影響するのね!」と発見にもなるので飽きが来ません。本当に相当なレベルまで作り込まれてる世界観だなあと思います。

 

大山はどこに行ったのか?

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大山のMA-1を継承してるんですかね

 これ、今さら気がついたんですが、吉瀬美智子の役ってMA-1着てるんですね。大山が初回の方で着ていたものと同じ。次回予告にもありましたが、やっぱり2人は元々バディで、精神的に近いものを共有していたんでしょうね。

 なのに、なぜ大山の話が現代では三枝と事件に関わった周辺の人からしか出てこないのか。まるで忘却されているかのようです。三枝も吉瀬美智子に聞けよ!って思いますけど、ここぞという展開の時までおあずけにしているのでしょう。大山って劇中では行方不明だから、生きてるとも言われてないし死んでるとも言われてないんですよね。となると、やっぱり最終回あたりに大山が現代に登場する熱い展開になってくるんでしょうか。メタルギアみたいでいいですね。

 というわけで、話の展開もさることながら、毎回発明されるタイムスリップのギミックにも注目なシグナル、見逃せません。