現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「おっさんずラブ 第二話 けんかをやめて」感想・レビュー

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 先ほど第一話の記事をあげたばかりですが、続いて第二話も。こっちで方向性が確定して、「なぜこんなにも笑えるのか?」が自分なりにわかったような気がするのでそのことについて言及していきます。が、そのまえに、、、

 

感想:あったじゃ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!

 

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 第一話では「吉田鋼太郎の乙女芝居のインパクトが10週で薄れないか心配だ」とか書いてましたが、浅い考察も甚だしいところでした。

 

 さらに激烈になってました

 

 インパクトとかそういう問題じゃないです。武蔵は武蔵の行動原理で暴走しているだけなので、彼の言動はインパクトのような突発的なものではなく、自然現象として長期的に観測していくのが正しい見方なのでしょう。よくTBSのドラマが表情のクロースアップを多用するために「顔芸」とか揶揄されてますが、こっちはそれどころじゃないです、もはや「歌舞伎」です。吉田鋼太郎伝統芸能です。

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お弁当おいしいかなぁ、、、

あらすじ

 部長の武蔵(吉田鋼太郎)からあまりにも直球な「好きです」という告白を受け動揺する春田(田中圭)は、同居人で同僚でもある牧(林遣都)からも突然キスされ、パニック状態になる。部長からの絶え間ないアプローチにタジタジとするばかりの春田だったが、牧に対しては「あれは冗談だったんだよ」という言葉を引き出すことに成功し、胸をなでおろす。しかし、「明日12時本社屋上で待つ」という武蔵流「果たし状アプローチ」を受けて屋上に向かった春田に待ち受けていたのは、想像を絶するおっさんたちの修羅場だった。

 

アイドルオタクの飲み会状態

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お前はるたんのいいとこ10個言えんのかよぉ!

 大爆笑シーンでしたね。屋上の「おっさんず修羅場」シーン。牧と武蔵の、春田への愛が爆裂するケンカ。武蔵が「はるたんのいいとこ10個」言うのに対して、牧は「はるたんの悪いとこ10個」と、牧は同棲しているからこそ言える悪いとこ10選を言うことで武蔵へのマウンティングを取ろうとしていたのですね。

「かわいすぎる!」

「存在が罪!」

「ピュア!」

これが武蔵が上げた「はるたんのいいところ」ですが、完全にアイドルオタクが推しを褒めるとき並みに語彙を消失しています。人が何か好きなものを語る時って老若男女問わず魅力的な言葉使いになるものですが、武蔵がまさかのドルオタ気質に変貌を遂げたところが今週の「どうかしてる!!」ポイントですよね。

あと、見てください、これ。

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完璧な構図

 おっさんたちの修羅場をワイドショットで捉えた画です。上部の建造物で三角形を切り取って、背景の東京タワーで空間を縦に埋める。その前景に揉めるおっさん。この構図の美しさ。いや、何いい感じに撮ってんだよ!!!って言いたくなりますよね。

 

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俺をシンデレラにしてくれたんだ

 あとはこれですよね。武蔵が春田に恋に落ちるシーン。誇張しすぎるくらい逆光で春田を撮って、そのリアクションとして美女の代わりに吉田鋼太郎を配置する。これ、恋愛ドラマの撮影手法としてはベタすぎるくらい定番かつ王道ですよね。そこにおっさんという異物を放り込むことでとんでもない世界観を作り出しています。

 

なぜラスト5分だけ月9になるのか?

 

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伝説のデコチュー

 あとはこれですよね。背伸びしておでこにキスをするという伝説のシーン。「おっさんずラブ」はこういう風に、ラスト5分だけ往年の月9ドラマのような、ベタなシーンをぶち込んできます。そしてその直後にスキマスイッチのいい感じの主題歌が流れるわけです。やってる本人たちはマジ真剣です。笑ってる私たちの方がおかしいのです(そんなことない)。

 初回もそうだったのですが、ラストに差し掛かるにつれて本当にベタベタな「そこまでやる??」っていうくらい甘い展開が繰り広げられてそれがまた異常に面白いのですが(このデコチューなんて、大爆笑しました)、なんでこんなに笑えるのだろう?と考えると、その理由は意外かつ、私たちの過去にぽろんと置き去りにされていたのではないかと思いました。

 これ、90年代に流行った「トレンディドラマ」をおっさんたちで再現してるんですよね。ラストの月9的演出って、まさにそう。私たちの中に「王道(ベタ)恋愛ドラマ=昔の月9」という刷り込みがあるからこそ、それをおっさんたちでぶち壊されていく様子がありありと見えて面白いのでしょう。

 そして、もう今となっては「トレンディドラマ」って過去の遺物。私たちが「バブリーダンス」を見て笑うように、若者たちがトレンディドラマを見ると「ベタだなあ!」と言ってくすっと笑ってしまいます。それをおっさん同士で誇張してやるからこそ、過去の古いドラマの文脈破壊を大々的にやれてそこがまた面白さとなっているのでしょう。これはその意味で新しい形のドラマを発明したと言えるのではないでしょうか。

 こう考えると、「おっさんずラブ」って本当はフジテレビがやるべきドラマだったと思うんですよ。彼ら自身が「トレンディドラマ」を作り出したのだから、それを自己言及的に過去のものとして自虐的に笑うことができるのもフジテレビだったはず。織田裕二とキムタクが山崎賢人くんを取り合う超豪華ドラマにすることも不可能ではなかったのでは???

 

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第三話 君の名は

 毎回大爆笑の次回予告、今回も吉田鋼太郎が全力疾走するだけで面白い。そんな感じで、来週も楽しみに見ます!!