現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「正義のセ 第一話」感想・レビュー

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 月・火とフジドラマが続きましたが(TBSの火10は来週から)、今日から日テレも春ドラマスタート。吉高由里子主演、阿川佐和子原作の検事モノ、「正義のセ」です。

 冬クールに衝撃を残した「anone」とは打って変わって、ポップでキュートな吉高ちゃんが活躍するお仕事ドラマに仕上がっていました。

 

感想:20代後半のお仕事女子を演じさせたら吉高由里子にかなうものはいない!

 

 「コンフィデンスマンJP」の長澤まさみのコロコロ変化する芝居もかなり魅力的でしたが、王道かつ今っぽい、仕事もプライベートも両立させながら活躍する女の子(私は勝手に「ファッション誌着回し2week女子」と名付けています)として吉高ちゃんはめちゃめちゃ可愛く弾けていました。

 役どころとしては、去年主演した「東京タラレバ娘」の延長線上にあるような感じ。しかし新人女検事として道を切り開いていく立場、という意味では前作より若返りが図られているのかもしれません。そして、ディレクターもタラレバと同じ南雲聖一さん。この方、タランティーノとか園子温とかに通底する、「女性を可愛く撮れる監督」の一人かもしれません。そんな感じで、気になった点をいくつか紹介していきます。

 

あらすじ

 港南検察に赴任した検事2年生である凛々子(吉高由里子)は、感情に流されやすく、不器用で、検事としてなかなかうまくいかない。相棒として付くことになった検事事務官の相原(安田顕)にも、小姑のように小言を言われる日々だった。そんな凛々子のもとに、部下に日常的にパワハラを行い、飲み屋でのいざこざの延長で暴力をふるって傷害罪に問われた恩田(石黒賢)がやってくる。容疑を真っ向から否認する恩田に対して、被害者である向井(浅利陽介)の話を聞いた凛々子は奮起し、彼を助けようと決意する。しかし、恩田が傷害を行ったという証拠はなく、向井を名誉毀損で訴えるなど様々な脅しが行われ、捜査は難航するのであった、、

 

 「女性」検事、竹村凛々子

 ストーリーとしては、恩田が向井を暴行した証拠を探そう!ということで、港南検察の人にも次第に協力を得ながら捜査を進めていき、恩田を追い詰める、という王道の展開なのですが、王道でわかりやすいだけにとてもすっきりと楽しめました。そして、その中にもしっかりと深さを隠している演出が素晴らしいです。

 劇中で何度も繰り返されるのが、凛々子が「検事の、竹村です」と身分証を見せると、相手(絶対に男性)が少し凛々子を軽んじる態度を見せるという一瞬。誰もが「女が検事か」という見下した姿勢を隠そうとせず、この男VS凛々子という構図がきっちりと描かれています。

 これは現代社会を反映しているのは言うまでもないことですが、調べたところ現在の検事における女性の割合は15%ほど。キムタク主演の「HERO」で一躍有名職業となった検事ですが、まだまだ男性社会的なところがあるんですね。

 そして面白いのが、凛々子に用意されたデスクがちょっと大きめで、「女の子のごっこ遊び」感が出ているところ。これは演出のためにわざと大きく机を作ったのか、吉高ちゃんが小柄なため起きた偶然かはわかりませんが、男性中心社会である検事という世界に迷い込んだ異物感が強調されているような気がします。

 さらに、初回の敵役として出てきた石黒賢の役も、大企業の管理職の強権的な男性。女性抑圧の代表格とも言える彼にパワハラをさせることで、立場の強い者に対する弱いものへの暴力に立ち向かう、というこの作品における「正義」が明確に示されたのではないでしょうか。(石黒賢はいい人の役が多いのに今回悪いやつなのが珍しいですね)

 

 また、そういう風に立場の弱い者VS権力者の戦い、だと「半沢直樹」に寄りすぎてしまい、かつ吉高ちゃんの持っている雰囲気を活かしきれないため、仕事の一面だけで凛々子を描かず、恋をして美容にも気を使う女子的側面も魅力的に描くことで差別化を図っています。こういう意味では、ライトに見れる「半沢直樹」と言ってもいいかもしれませんね。

 初回では凛々子がおぼろげながらも「正義」を掴んで勝利しましたが、これからどんな展開が待っているのか。安田さん演じる検事事務官とのバディものとしても展開できそうですし、恋の部分を深掘りして「タラレバ」的な可愛い演出を見ることもできそうです。次回以降とても楽しみで、この作品も毎週追いかけ決定です!