現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「あなたには帰る家がある 第一話」感想・レビュー

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 春クールも本格始動ということですが、TBSはやや遅い始動。金10「あなたには帰る家がある」で幕開けしました。昨日の夜Tverで見てからのレビューで放送から二日遅れになってしまいましたが、こうなると初見レビュー感も少し薄れてしまうのでなかなかすぐアップできる即時性も大事だなあって思ったりもします。

 

感想:玉木宏ダルトン・トランボに謝れ!!!!

 

 むちゃくちゃな感想ですが、来週も見ようと思っていますよ笑

 TBSでは波瑠主演の火曜10時「あなたのことはそれほど」以来の浮気モノということです。「あなそれ」では、波瑠が20代後半くらいの女性を演じて、高校時代の好きな男と浮気するという、青春よもう一度的なパターンのドラマ。かつ夫である東出くんのモンスターっぷりと全面に衝突させることで、サイコサスペンス的な作風に仕上げていたのが印象的でした。

 それに対して今回の「あなたには帰る家がある」、無理やり訳すなら「あなかえ」(なんだそれは)ですが、こちらは40代に差し掛かり、子供もだいぶ手がかからなくなってきた頃。子育てという夫婦共通の目的が(完全にではないですが)なくなり、再び自分の人生に対して目を向けてみようという気持ちになる年齢で、主人公の真弓(中谷美紀)は仕事復帰することで社会的な自分を、夫である秀明(玉木宏)は仕事先で知り合った綾子(木村多江)と浮気することで男性性を、それぞれ取り戻そうとします。

 

この夫の秀明の造形がなかなか私にヒットしました。学生時代から映画ヲタクで、1畳ほどの棚のスペースに映画のDVDやポスターがびっしり飾られている。大脱走のコレクターズエディションと通常盤を横並びにし、「ローマの休日」を安直なストーリーだとバカにし、「フェリーニが好きだ」と出会ったばかりの真弓に能書きを垂れる。綾子を口説く時には、「好きなスペイン映画があって、白い花を男の子が差し出すと、女の子がおかえしとばかりにほっぺたにキスをするんです」とおそらくホセ・ルイス・クエルダの「蝶の舌」の場面を引用する。

 そこまで映画好きでない女性に「フェリーニが好きだ」と言っておけばなんだかカッコつく感じがするからとりあえず名前だけ出しておく、というのは奥手の映画ヲタクが結構使いがちなトークだと思います。おそらく秀明は「道」しか見てませんし、途中で寝てると思います(勝手な妄想です)。

 本音は冒頭のシーンで見てた「荒野の用心棒」や棚に飾るほど大好きな「大脱走」のような、男の子系アクション映画のファンで、「ダークナイト」とか「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のよさを女性に語って困惑させる、「タラレバ娘」でいうところのもこみち的な人物なのでしょう(勝手な妄想です)。

 正直、この感じがツボでした。僕もフェリーニは「道」しか覚えてません。「8 1/2」はわけがわからなくて途中で断念しました。でも「ローマの休日」は大好きです。秀明は王女であるオードリー・ヘップバーンが、そんなに深い男に見えないけどイケメンなグレゴリーペックにやすやすと口説かれる様を見るのが嫌だったんだと思います(勝手な妄想です)。こんな風に、 映画オタクの男がそのまま成長するとどうなるか、という姿がそのフィルモグラフィーから想像できて、ここの細かい部分を詰めた美術担当のADさんも映画オタクなのではないかと思います。

 

 余談が長くなりましたが、内容的な話に移ります。

 前述の通り、娘の中学受験を成功させてそれぞれ自分自身としての生活を見つめ直して行動し始めた夫婦でしたが、お互いの嫌な部分ばかり見えてしまって関係性は冷えるばかり。真弓は十数年ぶりにカムバックした職場では浦島太郎状態で、一回り年下のトリンドルちゃんにけむたがられて役立たず扱い。秀明も同じような状態で、超男性主義的な顧客の太郎(ユースケサンタマリア)に軽く扱われて、哀れだとさえ言われる。

 そんな中、真弓が「あなたは家のこと何にも考えていない」と衝動的に言い放ってしまい、二人は激しく対立してしまいます。その後秀明は太郎に呼び出され、結果的には一晩中帰って来ないのですが、真弓は夫が帰ってくるのを一人で寝ずに待っているのです。どんなに憎くても、ちゃんと愛している描写がなんだか切ないです。

 その後、娘の麗奈(この子役の子かわいらしくて演技うまいです)に二人の馴れ初めを聞かれたのがきっかけで、もう一度夫婦を理解し直そうと決意する真弓。出会ったばかりの頃は、お互いの考え方が全然違うことがお互い惹かれあった理由だった。時が経って、いつしかそれはお互いがお互いを嫌う理由に変わってしまっていた。多分どんな夫婦にも、カップルにも普遍的な悲劇が描かれているからこそ、とてもこの部分に共感する人は多いのだと思います。秀明側も、「ローマの休日」を漫喫で見直したりなんかして、反省します。そうして二人は絆を取り戻すのです。

 

 正直、「え!?絆取り戻しちゃうの?」ってなりました。普通の浮気モノだと、男側の男性性の回復とか、女性の自己実現のために浮気が使われる、まさしくこのドラマのスタート時の状態と同じシチュエーションで浮気が始まるのですが、このドラマではその前提を一回取り払った状態から本編が始まるのです。いわば、この第一話は「ありふれた浮気ドラマ」が10話分かけてやる話を、たった一話で終わらせたと見ることもできるのではないでしょうか。お互いがお互いを信頼しあった状態で始まる浮気。これがどんな展開を迎えるのか、来週以降もとても楽しみな初回となりました。

 

 という感じで、初見の感想はこれですが、他の方のレビューなどは見ていませんので、これから後追い的に見ていこうかと思います。今日は日9やらないらしいので、ドラマのレビューは「コンフィデンスマンJP」の第二話でまたアップしますね。