現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「バーフバリ 王の凱旋」今からでも間に合う!見た者全員の偏差値を2にする超ド級インド映画【ネタバレなし・レビュー】

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 今朝のめざましテレビで、先週土曜日に行われた「バーフバリ 絶叫上映オールナイト」の特集が放送されていました。私も2月に映画館で見て以来、その熱狂の渦中に引きずりこまれて戻ってこれなくなったのが「バーフバリ」という映画です。昨年4月に前編「バーフバリ 伝説誕生」が公開され、12月末にその続編である「バーフバリ 王の凱旋」が公開となってから今現在までこうした上映が続いており、異例のロングランヒットとなっている本作。しかも「バーフバリ」が特殊なのは、大手のシネコンでの上映がほとんどない状態からスタートしたことです。東京でも上映館は新宿ピカデリーを中心に数えるほどしかなく、それでも文字通り熱狂的と言える支持者(信者=マヒシュマティの民)を獲得し、各地で「バーフバリ、ジャイホー!」という王を称える声が湧き上がる異常事態に。そしてその声は映画館を飛び出し本国インドにまで届き、6月に「バーフバリ 王の凱旋 インターナショナル版」という日本公開版より26分も長いノーカットバージョンの公開を決定させるにまで至ったのです。我らが王の名を呼ぶ声はとどまることを知らず、公開から3か月以上経った今になっても引き続き上映中、さらに各地で絶叫上映が断続的に行われており、まだまだこの熱に間に合う、いや映画館であの圧倒的な映画体験を逃すのは一生後悔する、、、そんな映画が「バーフバリ 王の凱旋」なのです。

 これでもまだバーフバリを見に行くことに懐疑的な人は、ツイッターで一度「バーフバリ」と検索してみるといいでしょう。すると、検索画面の大半は「マジマヒシュマティ」「バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!」「バーフバリジャイホー!バーフバリジャイホー!」「カッタッパルト」「ヤシの木マジ尊い」「バラーラデーヴァ様―――!!!」という言葉で埋め尽くされます。これでは何が魅力なのか全くわかりません(ただ、かなりヤバい映画だということだけはわかる)。かく言う私も、2月末にバーフバリ絶叫上映に参加した身であり、終了直後は「バーフバリ!バーフバリ!」以外の語彙を失った状態になったのでネット上の熱気もリアルタイムで経験しています。そうです、この映画を見た人はみんな語彙力を失い、ひたすら主人公である我らが王、バーフバリを称えることしかできなくなるのです。これはヤバいドラッグに関する記事ではありません。とにかくヤバいインド映画、「バーフバリ」をとにかく見てほしい、そんな願いのもとに書かれた記事です。

 

あらすじ

 遥か遠い昔、インドに栄えたマヒシュマティ王国。自らが伝説の英雄バーフバリの息子であることを知ったシヴドゥは、父の家臣カッタッパから、ある裏切りによって命を絶たれ、王座を奪われた父の悲劇を聞かされる…。カーラケーヤとの戦争に勝利を収め、国母シヴァガミから王位継承を託されたアマレンドラ・バーフバリは、自ら治めることになる国を視察するために、信頼する忠臣カッタッパと共に身分を隠し、旅に出る。その旅でバーフバリはクンタナ王国の王の妹デーヴァセーナと恋に落ちるが、王位継承争いに敗れたバラーラデーヴァは、バーフバリとデーヴァセーナの仲を裂き、バーフバリを王座から引き降ろすべく邪悪な策略を巡らしていた。やがて、王位を奪ったバラーラデーヴァはバーフバリと生まれたばかりのその息子の命をも亡きものにしようとする…。父バーフバリはなぜ殺害されなければならなかったのか? 母デーヴァセーナはなぜ25年もの間、鎖に繋がれていたのか? すべてを知ったシヴドゥはマヘンドラ・バーフバリを名乗り、暴君と化したバラーラデーヴァに戦いを挑む! 

  要約すると、とにかくすげえ強いバーフバリが、暴政を振るうバラーラデーヴァのもとに戦いを挑む!っていう話です。では、その魅力をなるべく論理的に、わかりやすく紹介しましょう。

 

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バーフバリがすごい強い

 この映画は、バーフバリがとにかく強いことで成り立っています。彼がなぜ強いかはわかりません。

バーフバリは剣撃をくらっても傷を受けません。なぜかはわかりません。

バーフバリは矢の雨あられが降り注ぐ中無防備で走り回っても当たりません。なぜかはわかりません。

バーフバリは牛久大仏級にデカい金ピカの像を一人で支えられます。なぜかはわかりません。

バーフバリ強いので1対1万くらい軽々制圧できます。なぜかはわかりません。

バーフバリは20mくらいの高さから落ちても微動だにしません。なぜかはわかりません。

こんな風に、バーフバリはすごくつよいのです。理由などありません。多分神に選ばれているからでしょう。そんな彼が悪いやつをバッタバッタと倒していくのです。まるで三國無双をプレイしているかのような爽快感。そして彼の強さを支えているのが次のポイントです。

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これの倒壊を一人で防ぎます



映像がめちゃくちゃかっこいい

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 この映画は、「こんな敵の倒し方できたらカッコいいな」というシチュエーションが200個くらい出てきます。2分に1回敵がスタイリッシュに倒されるか、誰かが怒って物をスタイリッシュに壊します。例えるならば、「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」でレゴラスが象をかっこよく倒すシーンが永遠に続くような感じです。息つく暇もなく、次々と圧倒的な「キメ画」が展開されることで、開巻10分もすると脳内にだんだんとカレーの匂いがたちこめてきます。

 

歌がマジ宗教

 

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 インド映画といえば、歌と踊り。今作もそれがふんだんに登場してきますが、普通のインド映画と大きく異なるのが楽曲。みんなで歌って踊れるのが従来インド映画楽曲の特徴だとすれば、「バーフバリ」の楽曲は王を称えるために作られた重厚な讃美歌。開始直後に流れる「ヘーッサ、ムッファッサ、ヘーサレハイサレムッファッサ」というよくわからないけど圧倒的な声量で歌われる曲に耳を傾けてしまえば、もうマヒシュマティ王国民の仲間入りが確定です。そのあとすぐ、マヒシュマティ王国国家が流れ始めるので、みんなで「マーヒシュマティー♪」と歌いましょう。歌詞は検索すれば既に日本を亡命してマヒシュマティ王国民となった民たちが解析しているのですぐ手に入ります。

 

マヒシュマティ王国民がバーフバリ愛しすぎ

 

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敬虔なマヒシュマティの民たち

 現実世界に存在する「バーフバリ」ファンたちは映画の舞台であるマヒシュマティ王国の民を自称していますが、その熱量は映画の中に生きるマヒシュマティ王国民から受け継がれたものです。この国民たちはとにかくバーフバリを愛していて、何かあればすぐに王を称えます。やり方は簡単。右手で左胸を二回叩き、こぶしを突き上げながら、「バーフバリ、ジャイホー!」と叫ぶ。これだけです。これは王国公式のやり方なのですが、単純に「バーフバリ!バーフバリ!」と彼の名前を叫び続ける場合もあります。「王の凱旋」の場合、彼の名前を叫ぶタイミングは100回くらいあります。私が本作を初めて見た時は、応援上映ではなく通常上映会でした。映画を見た人ならわかるであろうあの「バーフバリ、ジャイホー!」の場面では、あまりの叫びたさに胸が押しつぶされそうになりました。横を見ると、隣の人も握ったこぶしを必死に押さえていました。

 

応援上映が常軌を逸しすぎ

 以上のように、とにかく強くてカッコいいバーフバリが2分に一回スタイリッシュに敵を倒して脳内麻薬を分泌させ、さぁみんなで王を称えよ!とばかりに映画内の国民が彼の名を叫ぶ映画が「バーフバリ」です。これを応援上映でやったらどうなるでしょうか。

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私が参加した応援上映(上映前)の様子

 

やべえ

 

この一言です。30秒に一回大歓声が湧き上がり、拍手や黄色い声援が鳴りやむことがない。観客が一体となって「バーフバリ、ジャイホー!」と叫ぶ場面では、スクリーンが地鳴りしているかのよう。歌の場面では観客全員がタンバリンをたたき、「マーヒシュマティー♪」と声をそろえて歌う。映画の応援上映は、みんなで場を共有することが魅力だと思われていますが、「バーフバリ」の応援上映は違います。あの空間は、紛れもない「マヒシュマティ王国日本支部」なのです。私たちは映画の登場人物の一人となって、声を枯らして叫ぶのです。

 

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王を称えよ!!!

「バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!」

 

以上が、映画「バーフバリ 王の凱旋」です。恐らく何を書いているのかわからない読者も多いことでしょう。しかしこれはしょうがないのです。バーフバリを語るとき、誰しもが少年の心を取り戻し、そればかりか理性を失って通常の思考力が回らなくなるのです。恐らくインターナショナル完全版が公開されるときには、またオールナイト上映や絶叫上映が開催されることでしょう。その時には、この記事を読んでくれた方たちと、マヒシュマティの民として再会したいと思います。

 

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上映終了後、忠臣カッタッパのスライディング拝謁をする筆者