現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「コンフィデンスマンJP 第一話」レビュー

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 春クールドラマのトップバッターとして、フジテレビで「コンフィデンスマンJP」が始まりました!長澤まさみ主演の「コンゲーム」という、騙し騙され二転三転するジャンルのコメディドラマになっています。脚本は「リーガル・ハイ」でおなじみ、古沢良太さん。春ドラマをまとめた記事にも書いた通り、今期私が一番期待していたドラマでもあります。

 

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率直な感想:演出下手じゃない??

 

 何が本当で何が嘘なのだかわからないという部分が肝の「コンゲーム」であるはずが、「嘘」と「本当っぽい嘘」の部分が明確にわかってしまうために「あぁ、ここからひっくり返るのね」、「この逆が本当なのね」と先が読めてしまう部分が多くあった気がします。おそらく、脚本が悪いわけではなく、演出部分に問題があると思います。それはストーリー始まってすぐの隠し賭博上の場面を見ればなんとなく予想がつきます。

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 このドラマのファーストシーンは、ボクちゃんと女社長が地下賭博場で丁半博打に興じるシーン。中盆(サイコロ振る人)を務めるリチャードと彼らがグルになってイカサマをするところから始まります。明らかなイカサマに気づいたダー子は、自分が賭けに出てサイコロを振ることで、イカサマを打ち破ろうとする(それも演技なわけですが)。これがファーストシークエンスとして、ドラマの最初の引き、見せ場になっています。このシーンに必要なのは、ダー子がイカサマを破れるのかどうか?という緊張感。しかしこのシーンにはそれがうまく演出されていないために、後に全てがダー子が仕掛けた芝居だったということが明らかになっても意外性がないのです。騙されるシーンにサスペンスがないから入り込めず、ひっくり返されても驚きを感じない、というのでしょうか。おそらく「コンゲーム」を演出する上で最も大切な部分の演出がおろそかになっているために、(少なくとも私は)ストーリーの深いところまで入って騙し騙されを楽しむことができませんでした。

 

 面白くなってきたのは、飛行機の密室の中で赤星が心情を吐露する場面。赤星自身が今まで築き上げてきた自分像をひっくり返すことで、ストーリーがこれからどうなっていくのだろうか、と開始1時間にしてやっと盛り上がってきました。しかし、それがあまりにも「あからさまな」飛行機トラブルによって破壊され、結局元のテンションに戻ってしまったのがあまり好きではありませんでした。

 

 ドラマの初回だから編成枠的に元も子もないことかもしれませんが、このストーリーは60分尺でもよかったのではないでしょうか。盛り上がりを欠いた、騙すための仕掛けのエピソードが話を中だるみさせているように思えました。

 

 文句ばっかり言っているとあれなので少し好きだったところも。もちろん、この脚本がサスペンスフルな心理劇だったらもう少し演出もわかりやすくできたのかもしれません。しかし、コメディに要素を振っている部分が大きいためにサスペンスに緊張感を持たせづらい、バランスを取りづらい面が大きいことも演出の難しさとしてあるのでしょう。

 その中でも、長澤まさみの演技は非常に可愛らしく、古沢作品特有の「個性が際立ちすぎて理解不能なキャラクター」を生き生きと演じていました。東出くんの相変わらずの棒っぽい演技も、ボクちゃんというキャラクターを考えれば意外と成立しているところが狙ったのか狙ってないのかわからなくて面白いです。

 

 おそらく第二話も同じ演出家さんが撮ったのでしょうから、あんまり期待できません(あくまで全部私の印象なので二話からピタリとはまる可能性もあります)が、三話以降から別の演出家さんに変わった時、どのようにこのバランス取りの難しい脚本を扱うのかとても楽しみです。

 

 というわけで、短い感想ではありましたし、こんな悪口言うの!?って自分でもびっくりするくらいでしたが、「コンフィデンスマンJP 第一話」のレビューはこんな感じです。多分自分が期待値を上げすぎて見たのがよくなかったのかもしれない、、、