現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

【4月クールドラマ】古沢良太作品に吉高由里子一年ぶりの主演作など!春クールドラマ、何見よう?

 タイトルに悩んだ挙句、最初のかっこの部分を【4月クールドラマ・おすすめ・まとめ】という検索からの流入目的が超絶透けて見えるものにしなかった私を誰か褒めて欲しい。

 新年度に入りましたね。私の会社でも今日入社式が行われ、新しいテレビマンが生まれました。テレビ局の入社式は各局の意地の張り合い、みたいなところがあって、どれほどの大物を呼べたかなどを盛んに自分たちの報道番組に載せたりする文化があります(例えば日テレやテレ朝は春クールドラマの主演をサプライズゲストに呼んで新入社員と集合写真を撮ったり、フジテレビは音楽番組の観覧ゲストとして新入社員を招いて、新入社員のためだけのライブをここ数年行ったりしています)。斜陽産業にはなっているものの、やはり倍率が高い就活をくぐってきただけあって、夢と希望を抱いてやってくる新入社員たち。入社初日はだいたい華やかだけれども、そこは実は地獄の入り口だったよね、というのはどこの局員からも聞こえてくる話です。

 

 それはさておき、今日からNHK朝ドラ「半分、青い。」がスタートして、来週から続々と春クール(4月〜7月)のドラマが始まる頃。私自身もドラマを見て育ってきた人間ではあるので、映画主体とは言いながらもドラマも結構好きです。そこで、昨日散々こねくりまわした映画論をぶん回して恥ずかしい思いをしたので一転、「春クール・気になるドラマ」をピックアップしていきたいと思います。

ドラマを選ぶ基準

 毎クールおおまかに10本ほど流されるテレビドラマ。さすがに全部見ることはできませんし、実は制作環境の大きな違いもあって、面白い映画を予測するより面白いドラマを予測する方がよっぽど難しい(私にとっては)のです。視聴率毎回15パーセントとか取るようなドラマでも自分にとってはつまらないかもしれないし、数字が振るわない作品がSNS上で熱狂的な支持を得ていたりする。こうなると「何が面白いのか?」についての尺度が多すぎて、意外に確固たる「いいテレビドラマ」の定義がないように感じられます。

 では、そんな中で私が何を基準に毎クールの初回を見ているか、まずご紹介します。(%は影響される大体の割合です)

 

 1、脚本家(50%)

 2、主演俳優(25%)

 3、ディレクター、プロデューサー含む制作局(20%)

 4、あらすじ(5%)

 

 そうです。大体の人がそうであるように、私も脚本家で見るドラマを決めています。その次に、俳優さんが映画出身の若手だったり、純粋に好きだったりして見る。そして最終的には、各局のイメージで決めてしまう。大衆的な日テレ、作家性のTBS、水戸黄門ワールドを反復するテレ朝、迷走するフジ、一概には言えないですが、こんな感覚を持って結局TBSを見ようか、となっているところが最近は多いです(もちろん、フジも昔は面白いドラマ多かったですし、私もそんなフジのドラマを見て育ってきた世代です。迷走してはいますが、その中からぽんと面白いものが出てきたりもしてるのである意味今一番読めない局であることは確かです)。映画だったら監督とあらすじ(時代背景)がかなりの割合を占めるのですが、なぜここまで違うのかはまた別の機会に書きたいと思います。

 

 そんな私なりの観点で、4月クールのおすすめドラマを見ていきましょう。

 

【フジ・月9】コンフィデンスマンJP

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 【脚本】古沢良太(「リーガル・ハイ」「デート 〜恋とはどんなものかしら〜」

 【出演】長澤まさみ 東出昌大 小日向文世ほか

 【演出】田中亮 金井絋 三橋利行

 【あらすじ】『コンフィデンスマンJP』は、“欲望”“金”をテーマに、一見、平凡で善良そうな姿をした、ダー子、ボクちゃん、リチャードという3人の信用詐欺師たちが、金融業界、不動産業界、美術界、芸能界、美容業界など、毎回、さまざまな業界の華やかな世界を舞台に、壮大で奇想天外な計画で、欲望にまみれた人間たちから大金をだましとる、痛快エンターテインメントコメディー作品です。(番組HPより)

 

 いやめちゃめちゃけなしてたくせにいきなりフジの作品持ってくるんかい!!!

 

 こうなりますが、こうなのです。とにかく今クールの目玉は古沢良太最新作。スーパーハイテンション法廷コメディ「リーガル・ハイ」や、高等遊民ニート)という言葉を世に知らしめた「デート 〜恋とはどんなものかしら〜」に始まり、最近ではガッキー主演のミックスダブルスを題材にした映画「ミックス!」(こちらは未見)を手がけるなど、圧倒的物量のセリフとなんか納得しちゃう屁理屈を永遠にこねつづける作風が人気の、野木亜希子さんと並んで今トップを走る脚本家が久しぶりに連ドラに帰ってくるのです。これは見ないわけにはいかない!!

 元々、昨年度の月9(「貴族探偵」「コード・ブルー3」「あのよくわかんない政治のやつ」「海月姫」)は月9復活年としてかなりフジ的に力を込めて作られたはずだったのです。しかし蓋を開けてみれば、当たったのはコードブルーのみ。しかも無理やり7年前の流行りをもう一度持ち出して視聴率を取るという、少しずるいやり方(作品の良し悪しとはまた別の話ですが)。秋クールはもはやタイトルすら思い出せない政治もので、冬クールは芳根京子の演技力がありすぎて逆に浮いてしまうという悲劇。だからこそ、次は外せないはずなので、今回相当力を入れて作っているはずです。そんな月9的バックグラウンドからも、注目。演出には「恋仲」とか「好きな人がいること」、「貴族探偵」を撮った金井絋さんが入っていますね。

 

【フジ・火9】シグナル

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 【脚本】尾崎将也

 【出演】坂口健太郎 北村一輝 吉瀬美智子

 【演出】内片輝 鈴木浩介

 【あらすじ】無線機を通じてつながる"現在"と"過去"の刑事が長期未解決事件に挑む!時を超えた正義への強い思いとさまざまな人間模様が織りなす予測不可能なヒューマンサスペンス(番組HPより)

 

 またしてもフジ。ですが、フジの火9はフジとは別物と思って構いません。テレビ好きの方には常識かもしれませんが、この火曜9時枠はフジの系列局である関西テレビが制作したものをフジテレビが買って放送している形なので、フジテレビの電波を経由しているもののフジは制作にはノータッチなのです(私もテレビ業界入って初めて知りましたが何か、、?)。

 そしてこの関テレ枠がかなり面白い。印象的なのはちょうど去年の4月クールに小栗旬西島秀俊主演で制作された「crisis 」です。

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  金城一紀さんが脚本を務めたこの作品では、近年のドラマにない圧巻のアクションと渋い二人の演技が光りました。特に多くのドラマファンに衝撃を与えたのがこのシーン。


『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』 8話アクション

 

 1:40くらいから始まる、およそ7分間に渡る1カットのアクションシーン。「いや、これどうやって撮ったの?日本のドラマで可能なの?」とツイッターがざわつきました。伝説のシーンだと思います。(こういった1カットアクションは韓国映画の影響をかなり受けていると思われるのですが、またの機会に)

 

 こんな風に、かなり自分たちが面白いと思うものを好き勝手にクオリティ高く作ってしまうのが関テレ枠なので、今回も楽しみです。脚本は、「アットホームダッド」や「梅ちゃん先生」を書いた尾崎将也さん。ヤングシナリオ大賞出身者ですね。演出は、前述の「crisis」の鈴木浩介さんが入っています。

 

【日テレ・水10】正義のセ

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 【脚本】松田裕子 松本美弥子 梅田みか

 【出演】吉高由里子 安田顕 三浦翔平 広瀬アリス

 【演出】南雲聖一 明石広人 岩崎マリエ

 【あらすじ】水曜ドラマに、また新しい等身大のヒロイン誕生!主人公・竹村凛々子は、横浜地検で働く2年目の検事。まだまだ駆け出しの凛々子は、不器用だけど何事にも一生懸命。周りを巻き込みながらも、まっすぐに事件に取り組み、検事として、そして女性として成長していきます。(番組HPより)

 

 続いて日テレ「大人の女」枠こと水10からは、「東京タラレバ娘」以来一年ぶりに同枠でドラマ復帰を果たす吉高由里子主演作。注目ポイントは、スタッフもプロデューサーも「タラレバ」と同じメンツで作られているところです。アラサー女性の現実的すぎる話を絶妙なバランスをとってキュートにまとめるという荒技を仕掛けたチームが、今度は吉高ちゃんを使ってどんな世界観を表現するのか。

 もう一つの見所は、脚本のクレジットに3人並んでいるところですかね。3人で話ごとに分担するのか、10話全部共同脚本なのか。これは海外ドラマでよくこういう体制で脚本作りが行われていて、常に新しいフィールドを模索しようとする日テレらしい作り方かもしれません。後は、個人的に大好きな女優、広瀬アリスちゃん。このブログ書いて調べるまで出ること知らなかったのですが、もう見ること確定です。

「広瀬アリス」の画像検索結果 うん、可愛い。

 

【テレ朝・木9】未解決の女 警視庁文書捜査官

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 【脚本】大森美香(「不機嫌なジーン」)

 【出演】波瑠 鈴木京香

 【演出】田村直己 樹下直美

 【あらすじ】肉体派の波瑠×頭脳派の鈴木京香 正反対の2人だけど、何かが通じ合う!?最強の凸凹女刑事バディがミステリー界に春の嵐を巻き起こす!(番組HPより)

 

 あらすじがだんだん短くなってくのは私がめんどくさくなってるからとかではないです。あらすじの文言は番組HPのイントロダクションのところからもらってくることが多いのですが、これらはだいたい企画書の「企画意図」の方に載ってる文章だと思われます。この作品のあらすじはよく言われる「ログライン」という、作品を一行で表したもので、数多ある企画書の中から選ばれるため内容を簡潔に示しているのであらすじにも使いやすいのです。そして、イントロダクションの部分を各局で見比べて見ると、結構面白い。フジテレビがごてごてと、ケーキをデコレーションしていくように「ここが面白い!」「これがよくてここがこうなるからここがいい!」とモリモリにしていくのとは正反対に、テレ朝のイントロダクションは超理論的。超冷静。このテンションの違いがそのまま企画書の文化の違いにもなっていそうでそれぞれよく見てみたいものです。

 

 さて、このテレ朝の木10についてですが「ドクターX」、「BG」などに代表されるいわゆる「お仕事モノ」枠ですね。かつテレ朝のこの時間帯は、初めに悪役が出てくる→なんやかんや悪役にやられる→再起を誓う→決め台詞(「絶対失敗しないので等」)→逆襲する→嬉しい という、ある一つのパターンを繰り返し描く枠として私の中でイメージがあります。(勝手に「水戸黄門ドラマ」と呼んでいます)おそらくは「半沢直樹」の影響下にわかりやすいドラマを作ろうという風潮があった時代に「ドクターX」が大ヒットして、その流れを継承しようということでこのような同パターンのシナリオになっているのだと思いますが、わかりやすく安心して見やすいということで、高齢者の視聴率がかなり高いです。今回もそういう風になるのでしょうか。

 

【TBS・金10】あなたには帰る家がある

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 【脚本】大島里美

 【出演】中谷美紀 玉木宏

 【演出】平野俊一

 【あらすじ】夫婦は家族だけど、他人。平穏に見える夫婦の足元にも、実は大きな落とし穴が!?(番組HP)

 

 すみません、ロクなあらすじが拾えなかったので見たら自分で書きます。TBSの企画書の書き方は「想像力で補完してね」的な要素があって好きかもしれません。

 さておき、大傑作「アンナチュラル」からリレーを受け継いだTBS金曜10時枠。最近まで火曜10時は「漫画原作」枠、金曜10時は「作家」枠と住み分けがされていたのですが、クドカンが火曜をやったりしてこの分類もあんまり意味をなさなくなっていますね。今はどっちも作家性を強めてどぎついテイストの作品も増えています。

 夫婦は家族だけど、他人。この家族モノはドラマの大定番であり、かつ最近またブームがきているテーマ。特に家族の偽物性、疑似家族的なモチーフは日テレの「anone」や実は「逃げ恥」にも反復されていて、最近になって新たな解釈で描かれだしてきたのが「家族モノ」なのかもしれません。

 

【テレ朝・土11】おっさんずラブ

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 【脚本】未発表??(わかり次第更新します)

 【出演】林遣都 田中圭 吉田鋼太郎

 【演出】瑠東東一郎 山本大輔 Yuki Saito

 【あらすじ】女好きだけど、まったくモテない33歳のおっさん・春田創一(田中圭)。 だが、しか~し! 彼はある日突然、“未曽有のモテ期”を迎えることに!! 
それは文字通り“未曽有”の事態。 なぜなら、愛を告白してきた相手は… 
ピュアすぎる乙女心を隠し持つ“おっさん上司”黒澤武蔵(吉田鋼太郎)と、
同居している“イケメンでドSな後輩”牧凌太(林遣都
だったからだ――!

 

 通称「テレ朝のダークサイド」枠。木9で手堅く数字をとっておいて、土曜の深夜にはじけた快作を垂れ流しているしたたかなテレ朝の裏の顔。前クールの「明日の君がもっと好き」も、こじれにこじれた男女関係をLGBTを入れ込んで描くという、チャレンジングなオリジナル作品を作っていました。イメージとしてはテレ東の金曜24の枠みたいな感じなんでしょうか。とにかくあらすじがおかしい。演じる役者もめちゃくちゃで面白い。変なやつに憧れる変なやつを演じさせたら天下一品の林遣都くん、最近は男から好かれる役の方が多いんじゃないか説が出ている田中圭くん、そして強烈すぎるヒロイン、吉田鋼太郎、、、、

 これは、何がなんでも見よう。

 

【TBS・日9】ブラックペアン

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 【脚本】丑尾健太郎(「小さな巨人」)

 【出演】二宮和也 葵わかな 竹内涼真

 【演出】福澤克雄 田中健太 渡瀬暁彦

 【あらすじ】二宮が演じるのは、天才的な手技(縫合技術)を持つ外科医・渡海 征司郎。大学病院にいながら出世に興味のない一匹狼で、万年ヒラの医局員だ。手術成功率100%を誇る孤高の天才外科医である一方、その傲慢な性格と言動が周囲との軋轢を常に生んでいる。同僚からは「患者を生かし、医者を殺す」と評される、通称“オペ室の悪魔”。そんな渡海がメスを握る東城大学医学部付属病院に、他大学出身の新任の医師によって「外科医の腕を全く必要としない」手術用最新医療器具が持ち込まれ、新しい手術の形が導入されようとする。技量に左右されず誰でも扱えるという心臓手術用の医療機器に、外科医として手術の工程の一部を本当に任せることが出来るのか? この技術導入に裏はないのか…? と疑い、反対する渡海の闘いが始まる。

 

 現時点での日本ドラマ界最強の枠が、TBS日曜9時枠。そのエースディレクターが、「半沢直樹」で知られる福澤克雄。「陸王」も撮ってますね。今回は「チーム・バチスタの栄光」が代表作の海堂尊原作「ブラックペアン」を実写化。硬派な仕事モノや成り上がり劇などを得意とする日曜9時らしいチョイスとなっている。

 もはやいわずと知れた、という感じですが、TBSの日曜9時はかけてる金も人の数も桁違いです。正確な数字はわかりませんが、普通のドラマ一話分の予算の2、3倍が一話ごとにかかってるらしく、それは毎回の圧倒的なセットやエキストラなどを見ればはっきりとわかります。それがしっかりと視聴率にも反映されていて、「陸王」、「99.9シーズン2」と2クール連続で最終回視聴率20%を突破。ベタな展開だけれど泣いてしまう、夢中になってみてしまう、そんなクオリティの高さを持った枠です。さらに、役者陣に日本アカデミー賞を受賞してもはや映画の人になってしまったのでは!?と個人的に思っていた二宮くん、朝ドラ「わろてんか」が終わったばかりの葵わかなちゃん、陸王でみんなを感動の渦に巻き込んだ竹内涼真くんと、旬かつ実力があるメンバーで固められていて、どこから見ても見所満載と言えるでしょう。

 

民放に加えてNHKも見逃せない!

 これらの民放のドラマに加えて、日曜8時にNHKで放送中の「西郷どん」や、今日から始まった朝ドラ「半分、青い。」、さらに各種単発ドラマやNetflix配信の海外ドラマなどを加えれば、働いている場合じゃないことは明白です。「西郷どん」もついに大久保が話に加わってきそうだし、大半の場面において画面を支配していた渡辺謙こと斉彬様との別れが来たあと、鈴木亮平演じる西郷はどう変化していくのか?楽しみでしょうがないです。

 今ピックアップしただけでも、春クール7本見からスタートになりそうです。もちろん、全部見切れるとは思ってないので途中ギブアップもありますが、、、

 こんな感じで、レビューできそうだなっと思ったドラマに関してはレビューをさらっとまとめてあげようかなと思っているので、そちらもぜひ読んでくださいね。