現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「シグナル 第六話」感想・レビュー

f:id:agumon360:20180417220120j:plain

 前回、ほんのわずかなヒントのつもりで与えた一言が現在の2家族分の運命を変えてしまったという衝撃の展開を見せた「シグナル」。過去改変がもたらす影響をおよそ最悪の形で展開させたと思っていたら、それを超える一撃が今週待っていました。

 

感想:警察じゃけえ何をやってもええんじ

 

 先週役所広司演じる警察官がヤクザよりもヤクザらしく活躍する「孤狼の血」を見たせいで、警察組織がどんなに悪いことをやっていても驚かなくなっていました。警察が大企業の御曹司をかばったが故の冤罪なんて、あからさますぎますが現代においてもありえないことではないのでしょう。そして90年代の警察を包む空気感が東映映画に似ているといつかのレビューで述べたことがありますが、血の気の多い大山時代の警察と冷徹でクールな展開が続く三枝の時代との画面構成の違いもよくできているなあと今さらながら思うわけです。大山の生きる世界は土臭く、黄色味がかっているというか、フィルムで撮った感じに近いと思います。それに対して三枝の時代は全体的にブルーに寄せていて、ここ10年で流行りだしたサスペンス映画の色味ですね。フジテレビのドラマが全体としてポップな色味を好んで使うのに対して(日テレもそういう傾向がありますが)、関テレドラマはあくまでもシネマライクなカラーコレクションをすることで「本格派志向」をいっています。

 

過去を変えることで人を生き返らせることは可能か?

 今週、まさかの桜井警部の殉職がありました。日本の連ドラにおいて主要キャラが中盤で死亡することは非常に珍しいことですね。(海外ドラマだと視聴率の都合で主要キャラであっても人気が出ないとバンバン殺されていきますが、、、)そして、三枝は明らかに過去の冤罪事件を解決することで工藤を救い、その延長線上で起きてしまった誘拐・爆破事件をなかったことにしようとしています。それは名言こそされませんでしたが、桜井の殉職そのものをなくし、彼女をよみがえらせようという試みです。しかし、今までずっと徹底したリアリティを追及してきた「シグナル」の物語が、そんなファンタジーを許すでしょうか。もし許すとしても、そこにはなんらかの制約が伴うはずです。安易な過去の改変が今まで何をもたらしてきたかを考えると、一度死んでしまった人を生き返らせるという想像できる限り最も大きな過去改変を起こすわけですから、その結果何が起きても不思議ではありませんし、そこをどう描くかが楽しみでもあります。

 

地味に描かれていたタイムパラドックス現象

f:id:agumon360:20180515234904p:plain
f:id:agumon360:20180515234908p:plain
「ヨット」のメモ

 今週、あまりに何でもないかのように描かれていたので一見見逃してしまいそうで実は重大な場面がありましたね。「大山によるヨットの記述」です。大山の過去の捜査メモを見ていた三枝が事件の被害者3人を結びつける手がかりとして見つけた「ヨット」という言葉でしたが、実はこれは過去の大山が三枝からの情報提供を受けてノートに書きつけたものでした。ここで、タイムスリップもののド定番、タイムパラドックスが起きています。過去において大山が「ヨット」を知ったのは未来の三枝が教えてくれたからであるのに、現在の三枝が「ヨット」を知ったのは過去の大山が教えてくれたからです。ここは明らかに時系列が矛盾しています。本当に何の前触れもなく「ヨット」の記述が出てきたので一瞬「あれ?」となるのですが、ここの部分も後々別の現象で説明をつけてくれるものと思われます。

 

シグナル唯一の欠点とは?

 話の展開や演出のうまさであまりにも面白く、完璧に見える「シグナル」。あんまり褒め続けるレビューを書いても面白くないので、何か欠点はないものか、というまさかのあら探しをしたのですが、探しに探し、重箱の隅をつつきまくったあげく、およそ唯一であろう欠点にたどり着きました。それは、

 

オープニングタイトルがすげえダサい

 

この一点のみです。すごいあっさりしているうえに、特にカッコいいわけでもない。日頃サッカー中継を見ている人ならなんとなくわかるかと思うのですが、DAZNの選手紹介映像みたいでもっさりしているんですよね。でも、それだけです。むしろ一瞬で終わってくれるだけにさっと話に入れるので問題のうちに入りません。

というわけで、桜井は本当に生き返るのか!?ますます楽しみになってきました。

f:id:agumon360:20180515234918p:plain
f:id:agumon360:20180516141734p:plain
DAZNみのあるオープニング