現役テレビ局員の映画・ドラマ研究記

在京キー局で暗躍するテレビマンが送る、読んだら誰かにこそっと話したくなる映画・ドラマの徹底考察! ※本サイトの見解は全て筆者個人のものであり、特定の会社を利するものではありません。

「正義のセ 第五話」感想・レビュー

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 春クールもGWを過ぎて中盤戦に差し掛かってきました。ドラマの転換点となる第五話が続々と放送される、クールを通しての一つの見どころの時期ですね。「コンフィデンスマンJP」は最も見た目にも派手なメタ的なネタをぶち込んでいたようですし(伝聞系なのは見ていないからです、、、)、「シグナル」は過去と未来のつながりは本当にいいものなのか?という作品の根幹に関わる疑問が提示され、「正義のセ」では新しい恋の予感が生まれました。

 

感想:え、そっちに転がるん!??

 

 私は正直、凛々子がなんやかんや言って元カレのところに戻っていく展開になると思っていたのですが、もはや存在すら完全に過去のものとされていますね。その代わりに三浦翔平演じる大塚検事との関係性が発展していきそうな流れに驚きました。まあ、よく考えてみたらなんのための三浦翔平だ、という感じなので元からこれを想定したキャスティングだったんですね。ここからやっぱり元カレを再選択する流れにもいけるし、三浦翔平との月9的恋愛関係が築かれていっても面白いしで、若干停滞してしまったように見えた第四話から新しい空気感が作られたのではないでしょうか。

 

三浦翔平童貞説

 この新展開で目新しいところは、三浦翔平演じる大塚検事の「ピュア感」ですね。「イケメンパラダイス」の中津役や、「好きな人がいること」のイケメンオーナー役など、「手の届かない爽やかな王子様」キャラクターのイメージがかなり強い三浦翔平に新鮮な個性を持ち込んでいます。「正義のセ」でも、これまでは既存の三浦翔平イメージに沿った仕事人として振る舞っていましたが、凛々子を女性として意識することでとんでもないギャップが見れましたね。

 凛々子にキスされてからの大塚のリアクションの仕方はまさしく童貞そのもの。そこまでは実際いかないにしても、女性経験がかなり乏しいであろうことが読み取れます。恐らく自分の容姿の良さに対してあまり自覚しない人生を歩んできたのでしょう。たまにいますよね。ものすごいカッコいいのに全然女っ気がない人。大抵は仕事や趣味で満たされているので人生に女性の助けを必要としないタイプが多いイメージです。

 三浦翔平が今までのイケメンキャラでぐいぐい来るよりかは、凛々子に振り回されて変に意識する大塚がどんな風に関係を発展させていくかの方が新鮮だしドラマのテイストにも合っている気がします。やっぱりこのドラマの主人公は自立した女性。今までの王道ぐいぐいのイケメンに落とされる女性、ではせっかく積み上げてきた凛々子のキャラクターが壊されてしまいます。

 

リアル版「囚人のジレンマ

 終盤の高嶋と茂木を同時に取調べして、お互いがお互いの自供をするように仕向ける取調べの仕方は、経済学の基本でよく出てくる「ゲーム理論」の「囚人のジレンマ」のシチュエーションそのままでしたね。大学で勉強したことが思わぬところで出てきてびっくりしました。Wikipediaによると、

「お互い協力する方が協力しないよりもよい結果になることが分かっていても、協力しない者が利益を得る状況では互いに協力しなくなる、というジレンマである。各個人が合理的に選択した結果(ナッシュ均衡)が社会全体にとって望ましい結果(パレート最適)にならないので、社会的ジレンマとも呼ばれる。」

これです。両者が口裏を合わせ続けることができれば二人とも罰を受けずにすむけれど、裏切って自供したほうが後々得になることを考えて結果的に二人が罪を認めてしまう、というやつですね。ナッシュ均衡とかパレート最適とか、大学一年生の私をひたすら苦しめた語群です。容疑者二人の取調べを並行して見せていくやり方はとても効果的で、このドラマ史上屈指の取調べシーンとなったのではないでしょうか。

 

 というわけで、童貞三浦翔平と凛々子の恋の行方も気になる「正義のセ」、面白さが増してきました。